能登半島地震の想定外 “孤立”長期化で備蓄も見直し/172
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1月1日に発生した能登半島地震は犠牲者が230人を超える大災害となったが、発災から10日たった1月11日の時点で2562人が孤立状態にある前代未聞の事態が発生した。こうした状態は災害関連死を増やすことにつながり、今後の震災対応に重大な課題を残す。今回の地震の特徴から見てこうした事態がなぜ生じたのか、それを防ぐため何が必要かを考えたい。
能登半島先端部ではマグニチュード(M)7.6という、濃尾地震(1891年)以来の大型の直下型地震に見舞われ、道路が陥没・崩落して孤立地域が続出した。さらに、能登半島北部の沿岸で最大4メートルの隆起を記録し、それに伴って海岸線が海方向に約250メートル移動した。
こうした地殻変動は、地震学が観測を始めた20世紀以降では最大規模で、各地の漁港で港が干上がって使えなくなる事態となった。隆起によって海上からの救助活動もままならず、冬の気候や地形的な制約でヘリが使えない不運も重なった。
これまで日本では大都市へインフラの集中が進んだが、その半面、過疎地でのインフラ整備は大幅に遅れていた。結果として、住民の基本的な安全を確保する道路が数十年前の状態に放置され、災害の際に最も弱い部分にしわ寄せが来る事態を招いた。
地盤の隆起も今後の課題となる。地震で地盤が変動する現象は過去にも見られたが、関東大震災(1923年)では2メートル隆起し、東日本大震災(2011年)では1.2メートル沈降、熊本地震(16年)でも2メートルの沈降を記録している。
能登半島で隆起した港を使うには、下の岩盤を砕いて水揚げ施設を4メートル掘り下げるといった工事をしなければならない。今後こうした復興作業に膨大な予算が必要となるが、被災地の生活再建にとどまらず、今後の地震予測の観点からも復興が求められる理由がある。
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週刊エコノミスト
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