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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

能登半島地震の想定外 “孤立”長期化で備蓄も見直し/172

土砂崩れによる道路寸断で孤立した石川県輪島市の西保地区にある大沢漁港。港の底が隆起して露出した(2024年1月10日)
土砂崩れによる道路寸断で孤立した石川県輪島市の西保地区にある大沢漁港。港の底が隆起して露出した(2024年1月10日)

 1月1日に発生した能登半島地震は犠牲者が230人を超える大災害となったが、発災から10日たった1月11日の時点で2562人が孤立状態にある前代未聞の事態が発生した。こうした状態は災害関連死を増やすことにつながり、今後の震災対応に重大な課題を残す。今回の地震の特徴から見てこうした事態がなぜ生じたのか、それを防ぐため何が必要かを考えたい。

 能登半島先端部ではマグニチュード(M)7.6という、濃尾地震(1891年)以来の大型の直下型地震に見舞われ、道路が陥没・崩落して孤立地域が続出した。さらに、能登半島北部の沿岸で最大4メートルの隆起を記録し、それに伴って海岸線が海方向に約250メートル移動した。

 こうした地殻変動は、地震学が観測を始めた20世紀以降では最大規模で、各地の漁港で港が干上がって使えなくなる事態となった。隆起によって海上からの救助活動もままならず、冬の気候や地形的な制約でヘリが使えない不運も重なった。

 これまで日本では大都市へインフラの集中が進んだが、その半面、過疎地でのインフラ整備は大幅に遅れていた。結果として、住民の基本的な安全を確保する道路が数十年前の状態に放置され、災害の際に最も弱い部分にしわ寄せが来る事態を招いた。

 地盤の隆起も今後の課題となる。地震で地盤が変動する現象は過去にも見られたが、関東大震災(1923年)では2メートル隆起し、東日本大震災(2011年)では1.2メートル沈降、熊本地震(16年)でも2メートルの沈降を記録している。

 能登半島で隆起した港を使うには、下の岩盤を砕いて水揚げ施設を4メートル掘り下げるといった工事をしなければならない。今後こうした復興作業に膨大な予算が必要となるが、被災地の生活再建にとどまらず、今後の地震予測の観点からも復興が求められる理由がある。

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