習氏が金融犯摘発を指示 粛清におびえる金融官僚 金子秀敏
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中国のSNS(ネット交流サービス)で経済の深刻な状況を物語るスクリーンショットが拡散している。
「きのう発改委(発展改革委員会)の人とメシ食った。『苦しい日が10年単位の長さで続く。だが、まだ始まってない』だと。やはり権力の内側には明白人がいる」
「明白人」とは中国語で物事をわかっている人のことだ。
習近平国家主席が1月16日、北京の共産党中央党校で開かれた「政府高官金融勉強会」の開幕式で演説した。習氏は、危機に直面している中国の金融システムについて、「質の高い発展を推進せよ」と命じ、「牙やトゲのある金融監督が必要だ」と語った。
習氏の使う「質の高い」という表現は、国際常識を超えた中国式の処理のことだが「牙やトゲのある金融監督」は聞き慣れない言葉だ。関係者によれば、金融犯罪者を全員投獄する「ゼロ犯罪」政策のことだ。都市封鎖で新型コロナウイルスの感染者ゼロを目指した「ゼロコロナ政策」に似る。
演説で習氏は中央政府と地方政府の金融政策の責任者を前に、金融危機を乗り切るために金融犯罪を徹底的に取り締まるという、中国独自の解決法を指示した。債務を「牙とトゲ」(警察権力)で完済させれば金融危機は起こらない。
「素人が玄人を指導する」
習氏は総書記3期目に入ってから「素人が玄人を指導する体制」になったと評されているが、警察権力による金融システム構築という図柄は、素人行政の最たるものだろう。
金融の専門家でなくてもおかしいと思うはずだが、皇帝型権力者になった習氏に逆らうことはできない。習氏の隣には秘密警察のボスと恐れられている蔡奇・党中央書記処常務書記兼党中央弁公庁主任が目を光らせているからだ。
勉強会の開幕式には、習、蔡両氏ら党中央政治局常務委員7人のうち6人が出席した。金融担当の李強首相がいなかったが、スイスのダボス会議に出席中だったから不思議ではなかった。
だが19日の閉会式に、帰国し…
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週刊エコノミスト
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