中国の新発展モデルを担う中小ハイテク企業への金融支援進む 神宮健
中国政府が科学技術革新(イノベーション)に力を入れている。2024年の経済運営の任務の筆頭は、「科学技術革新により現代化産業体系の構築を導く」ことだ(23年12月の中央経済工作会議)。人口増加と土地・不動産開発に依存した従来の経済発展モデルが機能しなくなり、貿易・技術摩擦も収まらない中、自前の技術主導での経済発展にかじを切ろうとしている。
課題は、イノベーションの主な担い手となる中小民営企業の資金調達難だ。スタートアップのテクノロジー企業は、伝統的な銀行貸し出しで求められる安定的なキャッシュフロー(営業活動から得た現金)や担保物件となる資産が不足している。そこで、中国政府は23年、未上場株投資を主としながら、貸し出し・債券・保険も含めた金融サービス体系で支援する方針を打ち出した。
第一に銀行貸し出しの現状を見ると、23年9月末のハイテク製造業向け中長期貸出残高は2.6兆元で、前年同月比38.2%増と全体の残高の伸び、10.9%を上回る。これには中央銀行(中国人民銀行)の金融政策ツールの一つ、構造性金融政策が一役買っている。
具体的には中銀の「科学革新再貸出」で、商業銀行がハイテク企業などに貸し出した場合、貸出額の60%を中銀から低金利で借り入れられる。期間は23年3月までだったが残高は同9月末時点で3456億元と、効果は続いている。
ビッグデータ活用
また、テクノロジー企業への貸し出しについては、ここ数年、新たな方法も編み出されている。一例はデータ共有と、それに基づく貸し出しモデルの構築だ。
中国科学技術部は、中小のテクノロジー企業の情報を金融機関と共有する。データに基づく信用評価体系は10万社が対象で、これを利用したハイテク工業団地での貸し出しは1200億元(22年、科学技術部)に上った。地元誌の報道によれば、湖南省では中銀主導の下、財務指標に加えて研究開発投入、知的財産…
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週刊エコノミスト
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