習氏が打ち出した「新たな質の生産力」は成長率低下を止められるか 真家陽一
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中国の習近平国家主席が「新たな質の生産力」という新概念を提起している。1月31日に中国共産党中央政治局が主催した「質の高い発展の推進に関わる集団学習」でも、「『新たな質の生産力』の発展を加速しなければならない」と強調した。
この概念は習主席が2023年9月、黒竜江省視察時に初めて提起したもので、「技術の革命的ブレークスルー、生産要素の革新的配分、産業の高度化によって生み出される先進的な生産力」と定義される。その中核的な指標が、技術進歩や生産性向上などを指す「全要素生産性」だ。
中国の23年の実質GDP(国内総生産)成長率は5.2%と、政府目標(5.0%前後)を0.2ポイント上回った。とはいえ、新型コロナウイルスの感染再拡大の影響で、22年が3.0%に減速したことに対する反動の面も大きい。24年は反動要因がなくなる上、不動産セクターの低迷が続くことなどから、4%台に低下すると見る向きが多い。国際通貨基金(IMF)は、24年は4.6%、中期的には、生産性低迷と人口の高齢化が逆風となり、28年は3.5%に低下すると予測する。
マクロ経済学の「成長会計の理論」によれば、経済の成長要因は、量的要因の労働や資本と、質的要因である全要素生産性の三つに分解される。労働については、中国の生産年齢人口(15〜64歳)は、13年の10億1041万人をピークに減少に転じ、22年には9億6289万人と、10年余りで5000万人近く減少した。出生率も低下傾向で、23年は1000人当たり6.39と過去最低を更新した。生産年齢人口は長期的にもさらなる減少が見込まれる。
資本については、民間セクターは過剰債務を抱えており、従来のような大規模投資は難しい。国際決済銀行(BIS)によれば、23年6月末現在、中国の民間債務残高は282兆元(約5809兆円、1人民元=約20.6円)、GDP比率は228%と過去最高…
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週刊エコノミスト
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