「貿易強国」目指す習政権が迫られる貿易摩擦への対応 岸田英明
長引く不動産不況に代表される「経済の変調」が、昨今のメディアや投資家が語る中国関連の話題の中心になっている。変調の一つは輸出の減少だ。2023年に7年ぶりに前年割れし、4.6%減の3.38兆ドルとなった。だが当局は変調や後退とは認めていない。同年は世界の貿易全体も減った可能性が高く、当局は「(世界の輸出に占める)中国のシェアは14%前後の高水準を維持したとみられる」と強調。他にもアピールするのが輸出品目の高度化だ。
当局が22年の年頭あたりから使うようになった新語に、輸出の“新御三家”(中国語で「新三様」)がある。電気自動車(EV)、リチウムイオン電池、太陽電池を指す。“旧御三家”は衣類、家具、家電である。新語の狙いは、中国輸出はグリーン化・高度化しており先行きも明るい、とのメッセージを内外に伝えることだろう。
新御三家の23年の合計輸出額は前年比22.3%増の1386億ドルだった。この年のEVの台数ベースでの輸出は前年比77.6%増の120万台で、日本を抜き世界1位になった中国の自動車輸出全体491万台(同57.9%増)の、約4分の1を占めた。
消えた家具や婦人服
実際に中国の輸出品目は変容しつつある。23年と13年の輸出金額上位10品目(HSコード4桁ベース、「HSコード」は国際貿易商品の名称・分類を統一するための番号)を見比べると、家具や婦人服が姿を消した。電話機、パソコン、集積回路(IC)の上位3品目は10年前と同じだが、増加率は23年3位のICが13年比55.4%増と際立つ。4位の自動車は約17倍に増え、5位の蓄電池も9倍に増えた。6位の光電性半導体デバイス等(太陽電池など)は倍増した。
習近平政権は「自立自強」を唱え、「製造強国」を目指し、「(各国の対中)依存を強めよ」と訴え、「サプライチェーンの強靭(きょうじん)化」に取り組む。自国で製造できるものを増やして海…
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週刊エコノミスト
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