地震と裏金事件に追われた1月 岸田政権と「政治改革」はどこへ 松尾良
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元日に能登半島地震、1月2日に日航機と海上保安庁機の衝突事故が起き、もともと逆境にあった岸田文雄首相はさらなる試練にさらされた。自民党派閥の裏金事件を受けた政治改革との「二正面作戦」を迫られる首相に対し、永田町では9月の自民党総裁選までの「花道論」も半ば公然と語られる。正念場の政権運営はあっという間に1カ月が経過した。
上向かない内閣支持率
マイナ保険証問題を省庁に「丸投げ」して批判を浴びた昨夏以降、首相はメディア対応に前のめりだ。能登半島地震ではその傾向に拍車がかかった。1月1〜5日は各2回、週末の6、7両日も各1回。首相は発災1週間に計12回、記者団との質疑に応じている。
むろん、非常時に政権トップが国民に直接メッセージを伝える意味は小さくない。ただ同時に「露出=指導力アピール=政権浮揚」という図式を首相官邸幹部が信じている節もあった。
未曽有の被害をもたらした2011年3月の東日本大震災の際には、末期状態だった民主党・菅直人内閣の支持率が同4月の毎日新聞の世論調査で前回比3ポイント増、5月は5ポイント増と、一時持ち直したことがある。昨年12月時点で、岸田内閣の支持率は16%(毎日調査)と既に危機的水準にあった。自民党議員の一人は「林(芳正)官房長官の会見だってあるのに、首相はリーダーシップをはき違えている」と冷ややかに語った。
能登半島地震の被災地支援が始まる中、先行した共同通信の調査で、岸田内閣の支持率は前回比5ポイント増の27.3%、不支持が7.9ポイント減の57.5%。NHK調査は支持が同3ポイント増の26%、不支持が2ポイント減の56%となり、そこはかとなく上向く気配ものぞかせた。
だが、そこへ東京地検特捜部が自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件の一斉処分を発表した。安倍、二階、岸田3派の会計責任者らが立件される一方、大方の予想通り、安倍派のいわゆる「5人衆」ら派閥幹部は、政治資金規正法の不記載・虚偽記載による立件が見送られた。
首相は岸田派の解散を表明してアピールしたが、それ以降の世論調査で、内閣支持率は横ばいか、やや増だった。「トカゲのしっぽ切り」に国民の不信は根深く、支持率が下げ止まったのかはまだ分からない。
規正法の多すぎる「穴」
今後の焦点は規正法の「抜け道」を塞ぐ方策の実効性だ。
事件の舞台となった政治資金パーティーの収入について、政治資金収支報告書への記載義務を今の「1回20万円超」から献金(寄付)と同じ「5万円超」に引き下げる案がある。パーティー券は1枚2万円が相場とされ、政治家個人への献金が禁止されている企業・団体も購入でき…
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週刊エコノミスト
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