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国際・政治 東奔政走

派閥解消で政敵の力をそぐ首相 上川、小池両氏に脚光で「星雲状態」 及川正也

「政治とカネ」政局の行方は見えない
「政治とカネ」政局の行方は見えない

「星雲状態だ。何が起こるか予測がつかない」。派閥による政治資金パーティー裏金事件の衝撃が自民党内に広がる中、最大派閥として残る麻生派幹部がこう漏らす。

 名門派閥「宏池会」の事実上のオーナーである岸田文雄首相の「解散宣言」で火ぶたを切った全面的な派閥解消論は腰砕けに終わり、求心力の回復には程遠い。

 今秋の総裁選を見据え、党内には、「じり貧のまま、衆院解散をできずに退陣もありうる」という声が上がり、4月の「訪米花道論」もささやかれる。

 それでも「首相は意気軒高だ」という。側近議員は「去年の今ごろも5月の『広島サミット花道論』が言われたが乗り切った。首相を甘く見ない方がいい」と話す。

働いた「政治的なカン」

 その自信はどこから来るのだろうか。時計を1月18日に戻そう。首相が会長を務めていた宏池会の解散を検討していると表明し、政局が慌ただしく動いた日だ。

 首相は午後、派閥幹部数人を個別に呼び出し、「派閥解散」を告げたという。内々に打診されていた幹部は「絶妙のタイミングだった」と振り返る。

「派閥解消」に傾斜したのは、その1週間前の1月11日。事件を受けて設置した政治刷新本部の初会合で、約3時間に及ぶ議論を首相は聞き入った。

「派閥解消論」が相次ぎ、これが党内の大勢と判断した首相は周辺に改革の指揮を執る考えを示した。側近の一人は首相の心中をこう代弁する。

「『政治改革を断行してきた伊東正義(元外相)も後藤田正晴(元官房長官)も今の自民党にはいない。私がやるしかない』という気概だ」

 事件の渦中にある安倍派と二階派は岸田派に追い立てられるかのようにして解散を決めた。先手を打った首相の「政治的なカン」が働いたというわけだ。

「派閥解散」表明から1週間後の1月25日の臨時総務会で正式決定した政治刷新本部の中間とりまとめでは、全体的な派閥解散は見送られた。だが、実態的には解散した3派に森山派も追従し、解散に抵抗していた茂木敏充幹事長率いる茂木派は、有力者が相次ぎ退会し、結束を揺るがせている。

 この結果、麻生、茂木、岸田3派の主流体制が崩壊したという見方があるが、権力を握った指導者にとって時に「党中党」を形成する派閥は煙たい存在でもある。

 派閥解消は政敵の力をそぐ作用も働く。1950年代、「派閥解消は天の声」と言って各派に解散を迫った岸信介首相には、そうした思惑があったとされる。

 岸田首相が振りかざした派閥解消論も、今秋の総裁選をにらんだ策略だったとすれば合点がいく。世論に乗じ、ライバルを排除する好機ととらえたのかもしれない。

 当然、それにあらがう勢力もある。第2派閥だった麻生派だ。岸田首相の…

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