父の背を見ながら成長した勘九郎と七之助による追善公演 小玉祥子
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舞台 十八世中村勘三郎十三回忌追善 猿若祭二月大歌舞伎 籠釣瓶花街酔醒
歌舞伎座では十八世中村勘三郎「十三回忌追善」の「猿若祭二月大歌舞伎」を公演中だ。昼の部では「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」が十八世の長男中村勘九郎の佐野次郎左衛門、次男七之助の八ツ橋の顔合わせにより上演されている。
十八世勘三郎は時代物、世話物、舞踊のすべてを得意とするうえに、プロデューサー的センスにも優れ、仮設舞台を用いての「平成中村座」や古典を新演出で上演する「コクーン歌舞伎」などの試みを行い、野田秀樹や宮藤官九郎ら現代劇の人気作家に依頼した新作の創造にも積極的に取り組んだ。さらなる活躍を期待されながら、2012年12月に57歳の若さで没した。
「籠釣瓶」は三世河竹新七作で1888年初演。初演では次郎左衛門を初代市川左團次、八ツ橋を五世中村歌右衛門が演じた。その後次郎左衛門をあたり役とし、磨き上げたのが初代中村吉右衛門で、その実弟の十七世勘三郎、十七世の長男の十八世にも受け継がれた。
通し上演すれば、妖刀のいわれを持つ籠釣瓶(村正)をめぐる因果話だが、現在、主に上演されるのは、吉原の遊女・八ツ橋と彼女にほれ込んで通い詰めたあげく、手ひどく振られて凶行に及ぶ次郎左衛門の悲劇である。
八ツ橋の親元である釣鐘権八に挑発されたことで次郎左衛門に嫉妬した愛人の繁山栄之丞(しげやまえいのじょう)に迫られ、八ツ橋は満座の中で次郎左衛門に愛想尽かし(縁切り)をする。自尊心を傷つけられた次郎左衛門は、一旦は故郷に帰るが再び吉原を訪れ、八ツ橋を籠釣瓶で斬り殺す。
勘九郎は十八世の次郎左衛門で、八ツ橋の仲間の遊女…
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週刊エコノミスト
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