デビューの瞬間の美しさを、各部門で体感できる貴重な機会到来 梅津時比古
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クラシック 第92回日本音楽コンクール 受賞者発表演奏会
デビューの時は常に美しい。演奏家はその一瞬、初めて他者の世界に開かれる。聴衆には、初めてその人が自分の世界に入ってくる。デビュー時の演奏を聴いて、その人の演奏会に通うようになる人も多い。
デビューの定義は難しいが、昨年の日本音楽コンクールの各部門で1位となった全員が出演する「第92回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会」を、デビューの時と呼んで間違いはないだろう(3月5日18時、東京オペラシティ)。かつてこの受賞者発表演奏会に、ロン=ティボー国際ピアノ・コンクールで優勝した亀井聖矢も、ショパン国際ピアノコンクールで2位に入賞した反田恭平も登場した。本選が行われた順に今回の演奏者を紹介しよう。
チェロの1位はコンクール時わずか19歳であった北村陽(現在、桐朋学園大学とベルリン芸術大学のダブルスクール)。日本音楽コンクール全体で最も印象に残る人に与えられる「増沢賞」をも受賞した。デュナーミク(音量差)の幅広い、深い音で情熱を体現するだけに、今回取り上げるエルガー《チェロ協奏曲》第1・2楽章は名演になるだろう。テクニック、音楽性、音色など、すべてにわたって傑出。すでにヨハネス・ブラームス国際コンクールにも優勝しているが、今後、世界で求められるチェリストになるのは間違いない。ぜひ聴いておきたい。
声楽の1位は山下裕賀(ひろか)(メゾソプラノ)。声の核にぶれがなく、言葉をしっかり表現するので詩・ストーリーの起伏が手に取るように伝わってくる。今回はロッシーニ《セビリアの理髪師》から“今の歌声は”を歌う。ホルンは吉田智就(ともなり)が1…
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週刊エコノミスト
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