中国経済“衰退論”巡り強まる言論統制 入り交じる楽観論と悲観論 河津啓介
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中国経済の「衰退論」に、習近平指導部が神経をとがらせている。2024年の経済運営方針を協議した中央経済工作会議は「宣伝と世論の誘導を強化し、中国経済の光明論(楽観論)を鳴り響かせる」と号令をかけた。スパイ摘発を担当する国家安全省が「中国衰退という虚偽の言説を作りだし、体制を攻撃」することに警告を発する物々しさだ。
強まる言論統制は景気の先行きを巡り国内でも議論があることの裏返しだろう。中国経済誌『財新週刊』(23年12月25日)は、空理空論よりも事実を重視する「実事求是」への回帰を求める社説を掲載。文化大革命期に、経済が破綻しながら「形勢は良い」と事実をねじ曲げたり、先進国に背を向けて鎖国状態に陥ったりした過去の過ちに言及し、改革・開放路線の「初心」を取り戻すべきだと説いた。政府批判とも取られかねない内容だけに、すぐにネット上では閲覧できなくなった。
別の経済メディア『第一財経』は1月3日の社説で、政治権力が市場から手を引き、権限を手放すことが重要だと提言した。企業や市場への管理を強める習指導部に政策の見直しを求めているようにも読める。
メディアだけでなく、エコノミストの間でも楽観と悲観が入り交じる。
楽観派を代表する元世界銀行副総裁、林毅夫氏はネットメディア「観察者網」が1月18日に掲載した講演録で「これまでも中国崩壊論が繰り返されたが、我々は安定した成長を保持してきた」と主張した。
林氏は「世界で最も競争力を持つ電気自動車(EV)、太陽発電、リチウム電池の発展は、民間企業が主力だ」と述べ、国有企業を優遇し、民営企業を締め付ける「国進民退」との批判はあたらないと指摘。人口構造の変化による労働力の減少についても、技術革新や教育水準の向上の余地が大きい「後発国の優位」がまだ存在するとして、「先進国の理論」によって中国を分析するのは誤りだと強調した。
一方、エコノミストの清和…
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週刊エコノミスト
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