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米経済「着実に強い成長」 4月に利下げか 鈴木敏之
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1月31日、米国の金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、米国経済の足元の状況について、「着実に強い経済成長を続けている」との認識を示した。さらに、同議長は、「この50年みなかった4%割れの低失業率を約2年間続けている」と述べた一方で、すでにインフレ率が低下している点を強調した。
まず、経済成長についてみると、2023年第4四半期(10~12月)の成長率は前期比3.3%(年率換算)であった。FOMCが想定する潜在成長率1.8%を上回る成長が6四半期続いている。その内容は、経済の柱である民間最終需要がけん引しており、原動力は個人消費である。それを支えるのが雇用の拡大で、労働需給の逼迫(ひっぱく)がもたらす高い賃金上昇が、実質賃金の上昇率を高止まりさせている。
個人消費を巡っては、新型コロナウイルス禍における財政支出対応で家計への所得移転が起き、その結果として生じた過剰貯蓄の取り崩しが枯渇することや、学生ローンの返済免除が止まって返済負担が消費を圧迫することが懸念されていた。だが、実際には堅調であり、着実な経済成長を支えている。アトランタ連銀の予測モデル「GDPナウ」は今年1〜3月、実質4.2%の成長を見込んでいる。
当面続く賃金上昇
雇用拡大、低失業率は、当面は続きそうである。米労働省は2月2日に発表した今年1月分の雇用統計では、非農業部門雇用者増加数は、前年同期比1.9%増と潜在成長率を上回る力強さである。非農業部門雇用者増加数は景気先行指数を追う形で伸びており、今後数カ月はこの雇用の伸びが続くであろう。そうした環境下では引き続き労働需給の逼迫、賃金上昇も続くことが見込まれる。
米国では経済成長、雇用が強い中でインフレ率は低下傾向が見えている。食品とエネルギーを除く個人消費支出(PCEコア)指数の前月比の直近3カ月平均は0.123%まで下がっている。この勢いが続けば、PCEコアは今年4月ごろに前年同月比で2.0%を割れる。その時、FRBは利下げを迫られるであろうが、それは金融緩和の余地があるという意味を持つ。
米国経済はインフレを2%目標に収めようとし、一方で、強い経済成長が着実に続いている。かつてないほどの良好な経済状態に入っているといえるのかもしれない。
(鈴木敏之・グローバルマーケットエコノミスト)
週刊エコノミスト2024年2月20・27日合併号掲載
FOCUS 米金融政策 インフレ2%割れも 今春にFRB利下げか=鈴木敏之