業績復活の自動車 回復の半導体関連 広木隆
業績の復活や回復、「値上げ力」のある企業に注目だ。
セクター別で見ると、「業績復活」のテーマでは、まず自動車が挙げられる。出そろった各社の4〜12月期決算では、マツダなど3社で純利益が過去最高を更新。自動車メーカー全体7社の純利益合計も最高だった。供給網の正常化による生産の回復や円安、値上げが収益を押し上げた。
中でもトヨタ自動車の業績が群を抜いている。2024年3月期の純利益は84%増の4兆5000億円。従来予想から5500億円上方修正し、2年ぶりに最高益を更新する見通しだ。トヨタは決算発表直後から株価が急伸し、時価総額で日本企業初の50兆円を超えた。復活の印象が強いのはホンダだ。営業利益は16年ぶりに過去最高を更新。工場閉鎖など構造改革も進み、長らく低調だった自動車事業の回復が鮮明だ。
次に「回復」感が著しいのは電子部品・半導体関連。電子部品や半導体の在庫調整一巡が経済統計からも鮮明だ。日本で半導体関連といえば製造装置や部材、その周辺機器で、東京エレクトロン、アドバンテスト、信越化学工業、レーザーテックなどの存在感が強い。これらはいうまでもなく有望だが、実は「日の丸・半導体」メーカーも復活の兆しがある。
TDK
例えばルネサスエレクトロニクスはマイコンが強く、アナログ、パワーデバイスが弱点とされてきたが、相次ぐ買収戦略でこれらの分野への広がりが期待できる。パワー半導体では、三菱電機や富士電機も有力企業。電子部品では村田製作所やTDKなど、強い技術力を武器にした企業が市場でじわりと存在感を高めている。
個別で「復活」の兆しがあるのはリクルートホールディングスだ。24年3月期の純利益は約3割増の3540億円と過去最高を更新する見込み。国内の求人・販促メディアなどのマッチング&ソリューション事業が寄与する。一方で米求人サイトの「インディード」を含むHRテクノロジー(人事・労務アプリなど)事業の不振は続く。米国の労働市場縮小が原因だが、それらは一時の過熱感が薄らいでいるだけで、早晩落ち着きどころをさぐる展開になろう。当面は国内事業の好調で業績を下支えし、HRテクノロジー事業の回復を待つこととなりそうだが、数年内には「完全復活」の可能性が大きいと見る。
(広木隆〈ひろき・たかし〉マネックス証券チーフ・ストラテジスト)
日経平均株価予想
高値(時期) 4万3000円(12月)
安値 3万6000円(2月)
週刊エコノミスト2024年3月5日号掲載
株2 復活 ホンダ、東京エレ、三菱電機 村田製作所、リクルート=広木隆