厚労省の「毎月勤労統計」は実態の正確な反映なのか 斎藤太郎
2023年の春闘賃上げ率は30年ぶりの高さとなったが、実際の賃金は伸び悩みが続いている。
厚生労働省の「毎月勤労統計」によると、名目賃金(1人当たり現金給与総額)は23年4〜6月期が前年比2.0%増、7〜9月期同0.9%増、10〜12月期同1.0%増と低い伸びにとどまっている。生産活動の停滞を反映して所定外給与が低迷していること、賃金水準が相対的に低いパートタイム労働者比率が上昇していることが平均賃金の押し下げ要因になっているためである。
ただし、毎月勤労統計は、毎年1月分調査時に実施されるサンプル入れ替え(30人以上規模の事業所について、全体の3分の1ずつ調査対象事業所を入れ替え)によって断層が生じる場合がある点には注意が必要だ。
厚生労働省が参考として公表している共通事業所(前年同月分及び当月分ともに集計対象となった調査対象事業所)の現金給与総額は、23年4〜6月期が前年比2.4%増、7〜9月期同1.9%増、10〜12月期同1.9%増と本系列よりも伸びが高い。
共通事業所のみを用いて集計されているため、本系列に比べてサンプルサイズが小さいことに留意が必要だが、23年春闘の結果を踏まえれば、こちらのほうが実際の賃金の伸びに近い可能性がある。
指標で異なるパート比率
また、毎月勤労統計は、サンプルの入れ替えによって23年のパート比率は実態よりさらに上昇している可能性がある。
春闘の…
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週刊エコノミスト
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