愛之助が侠客と女房の二役 義理にからまれた悲劇演じる 小玉祥子
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舞台 歌舞伎座 四月大歌舞伎 夏祭浪花鑑
夏の大坂を舞台に侠客(きょうかく)・団七九郎兵衛の義理にからめた悲劇が描かれる「夏祭浪花鑑」が歌舞伎座の「四月大歌舞伎」昼の部で上演される。団七と一寸徳兵衛の女房お辰の二役を勤めるのは片岡愛之助。2023年度の芸術選奨文部科学大臣賞を受賞するなど活躍は目覚ましい。
喧嘩(けんか)沙汰で入牢(じゅろう)していた団七は、解き放たれた住吉神社前で恩人玉島兵太夫の息子磯之丞の恋人で遊女の琴浦を助け、琴浦に横恋慕する大鳥佐賀右衛門に雇われた一寸徳兵衛と対決する。そこに団七の女房お梶が現れて仲裁に入ったことから、徳兵衛も兵太夫に恩義があるとわかり、団七と徳兵衛は義兄弟の誓いを交わす。磯之丞と琴浦は団七の仲間の老侠客、三婦(さぶ)にかくまわれていたが、お梶の父、義平次は、金にしようとして団七の使いと偽り、琴浦を連れ出す。団七は後を追いかけて琴浦を奪い返すが誤って義平次を殺してしまう。
延享2(1745)年に人形浄瑠璃で初演され、後に歌舞伎に入った。団七は魚屋が本業だが義理を重んじる侠客でもある。見せ場は多く、序幕の「住吉鳥居前」では、囚人姿で髭(ひげ)が伸び放題であった団七が現在の床屋にあたる髪結床に入って出て来ると、すっかりいい男に変身して登場する。
続く場面が「難波三婦内(さぶうち)」。ここでは愛之助のもうひと役のお辰が活躍する。三婦の女房おつぎは磯之丞をお辰に託そうとするが三婦はお辰の顔に「色気がある」ので、二人の間に万が一のことがあっては、徳兵衛に申し訳がたたないと応じない。そこでお辰はアジを焼くのに用いていた鉄弓を頬に押し当てて火傷を作り、…
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週刊エコノミスト
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