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クリーブランド・クリフス 2020年に進出した鉄鋼業で世界22位 岩田太郎

オハイオ州クリーブランドの製鉄所前にあるクリーブランド・クリフスの看板(Bloomberg)
オハイオ州クリーブランドの製鉄所前にあるクリーブランド・クリフスの看板(Bloomberg)

Cleveland-Cliffs 鉄鉱石採掘で1847年創業/110

 クリーブランド・クリフスは米鉄鋼大手だ。世界鉄鋼協会のデータによれば、2022年の粗鋼生産量は世界22位の1680万トンに上り、米国企業としては2位だった。

 1847年、中西部オハイオ州の実業家たちが同ミシガン州の鉄鉱山で採掘を目指して前身企業を創業した。採掘が軌道に乗ると、鉄道や桟橋を整備して五大湖沿岸の製鉄会社に供給するようになり、91年に同業他社と合併して現社名に改称。1910年代には東部ペンシルベニア州などの鉄鉱山を取得し、戦後になると製鉄原料のペレットを生産し始めた。60年代にはオーストラリアとカナダで採掘に乗り出している。

 創業以来、鉄鉱石を中心とした資源大手だったが、2020年に鉄鋼大手を相次いで買収した。米AKスチールと、ルクセンブルクに本社があるアルセロール・ミタルの米国事業の一部だ。これによりクリーブランドのフラットロール製品と自動車用鋼材の生産量は北米最大規模となった。

 鉄鋼業界は需要の鈍化、利益率の低下、サプライチェーン(原材料などの供給網)の混乱、最新技術や地球温暖化への対応など、多岐にわたる課題に直面する。同社は昨年、コスト削減と競争力強化を狙って米鉄鋼大手ユナイテッド・ステーツ・スチール(USスチール、22年粗鋼生産量1449万トン、世界27位)に買収を持ちかけたが、日本製鉄(同4473万トン、同4位)に競り負けた。

 23年12月期売上高に占める製鉄事業の比率は97%に上り、主力事業だ。販売先別の同事業売上高は自動車74.40億ドル(約1.1兆円)▽インフラ・製造業56.12億ドル(約8362億円)▽卸売業・加工業53.30億ドル(約7942億円)▽鉄鋼業29.49億ドル(約4394億円)──と自動車が多く、前期比伸び率も12%と最も高い。

 ただ、競争は熾烈(しれつ)だ。今年2月15日には南部ウェストバージニア州のブリキ工場を4月に休止すると発表した。影響を受ける従業員は900人以上に及ぶという。クリーブランドと全米鉄鋼労働組合(USW)はカナダ、中国、ドイツ、韓国の企業がブリキ製品をダンピング(不当廉売)していると主張。米商務省は1月、4カ国の同製品に追加関税を導入すると発表した。しかし、政府機関の米国際貿易委員会(ITC)は認めなかった。クリーブランドは工場の休止を決めた直接的な理由はITCの決定だとした。

「もしトラ」は好機か

 USスチールを巡って、日鉄は昨年12月、141億ドル(約2.1兆円)で買収する契約を締結したと発表した。クリーブランドが提示した金額の…

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