全人代で示した「新たな質の生産力」で競争力アップに挑む中国 神宮健
今年3月の全人代(全国人民代表大会、国会に相当)における政府活動報告は、当面の景気対策の点では迫力不足であったかもしれないが、今後の中国の経済発展モデルや産業政策の方向を具体的に示している。
同報告によれば、中国は「現代化産業システムの構築を強力に推進し、新たな質の生産力の発展を加速」する。また、科学技術の革新によって「新型工業化を加速して(経済全体の生産性である)全要素生産性を引き上げる」。
不動産不況に象徴されるように労働力と資本の大量投入による経済発展モデルが行き詰まる中、技術革新と生産性向上による経済発展モデルへの転換を図る狙いがある。「新たな質の生産力」とは2023年9月に習近平国家主席が提示した新概念で、具体的には新興産業や未来産業などを含み、現代化産業システムの核心部分となる。
新興産業には、自動運転可能な新エネルギー自動車、水素エネルギー、新素材、創薬などがあり、バイオ製造、商業宇宙飛行、そして政府活動報告では初めて言及された「低空経済」(低空域での人・物輸送に関連する経済活動)なども成長エンジンとされる。また、未来産業として量子技術や生命科学を発展させる。
報告によれば、これらに並行してデジタル経済も発展させる。デジタル技術と実体経済のさらなる統合を目指す「人工知能(AI)+(プラス)」は、AIを製造、医療、交通、農業などの分野と統合して、新たな製品・サービスを生み出すことを意図している。10年代に提起された「インターネット+」がインターネットをインフラ施設と位置づけ、インターネットで各産業をつなぎ、今日のスマート製造などにつなげた例もあることから、AI+に…
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週刊エコノミスト
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