激減の対中直接投資 「投資中国」の旗振るも具体策は進まず 真家陽一
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「ハイレベルの対外開放を拡大し、『投資中国』のブランドを構築する」。3月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代、国会に相当)初日の「政府活動報告」において李強首相はこう表明し、外資誘致の強化方針を示した。
背景にあるのが対中直接投資の減少だ。国際収支ベース(流入額から流出額を差し引いた純増額)では、2023年は前年比81.7%減の330億ドルに激減した。内訳では、「株式資本および収益再投資」が61.1%減の621億ドルと大幅に減少したことに加え、「負債性資本」(海外の親会社から中国の子会社への貸し付けなど)が291億ドルの流出超過となった。
中国共産党の経済運営を担う中央財経委員会は、減少要因として①外部環境の深刻な変化、②新型コロナウイルス感染症の影響、③人件費の上昇に伴うコスト優位性の低下──の3点を指摘する。
中国商務省が23年9月に公表した「中国外資統計公報2023」によれば、22年末現在、中国に設立された外資企業は累計112万6357社と100万社を超え、同年の納税額は2兆9264億元(約61兆4544億円、1元=約21円)、貿易額は2兆764億ドルに達し、それぞれ総額の17.6%、33.1%を占めた。中国経済における外資のウエートは決して小さいものではなく、投資減少は中国にとって深刻な問題だ。
政府活動報告の方針を踏まえ、国務院弁公庁は3月19日、「ハイレベルの対外開放の着実な推進と外資の誘致・利用の強化に関する行動計画」を公表。計画は「外資は中国経済と世界経済の繁栄と発展を推進する重要な力」と指摘し、①投資自由化の拡大、②対中投資の魅力度向上、③行政サービスの改善…
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週刊エコノミスト
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