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経済・企業 独眼経眼

悲観的にしか語れない日本メディアの景気報道 藻谷俊介

 最近筆者が気になることの一つに「春闘で大企業は賃上げできたとしても、中小企業に波及するかが課題」と、メディアが今もなお繰り返していることがある。「円安は日本売り」説もそうだが、日本経済をとことん否定的に見たがる風潮は正しくない。

 図1は、法人企業統計の人件費を資本金1億円のラインで切り分け、大企業と中小企業で示したものだ。新型コロナウイルスの感染拡大以降の局面で、実は大企業と中小企業の賃上げの勢いには大差ない。直近の四半期の名目伸び率を年率換算すると、大企業が7.2%、中小企業が5.3%と、どちらもインフレ率を十分に上回る。中小企業とて人手を確保するには、いまや市場価格で賃金を払う必要があるのである。

 そしてこうした無理を強いられれば、中小企業の経営が苦しくならないはずがない。図2が示すように、両者の利益の差はこのうえなく広がっている。春闘後の変化ではなく、いずれも昨年10~12月期までの推移だ。

 経済産業相が今年3月、大手電機メーカーに対して、中小企業の価格転嫁を受け入れるようにという異例の要請をしたが、大企業と中小企業の利益格差を縮めるには、大企業の利益を減らして、中小企業の売り上げを増やすしかないからである。なるほど図2のように、大企業は利益の拡大で株価上昇は正当化できるとしても、その裏で国民経済を下支えしている部分が疲弊し、次代の競争力を支える力がなくなっていくなら、明日…

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週刊エコノミスト

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