世界情勢の新潮流 米論壇識者が分析・提示 孫崎享
有料記事
×月×日
私は日々、国際情勢のブログを発信しているが、ここ数年考えられない現象が出現、ないし実現しようとしている。例えば米『ニューズウィーク』誌(4月8日号)は「米国の23%の人が自分の州が独立した方がいいと考えている」と報じた。かつてなら考えられない声が出る中、新たな潮流を知る必要がある。
こうした中、『民主主義の危機 AI・戦争・災害・パンデミック 世界の知性が語る地球規模の未来予測』(朝日新書、聞き手・訳:大野和基、957円)は極めて参考になる。著者はイアン・ブレマー、フランシス・フクヤマ、ニーアル・ファーガソン、ジョセフ・ナイ、ダロン・アセモグル、シーナ・アイエンガー、ジェイソン・ブレナン各氏の7人。いずれもこれまでその言論が注目されてきた人ばかりである。
私が最も着目したのはイアン・ブレマー氏で、次のように述べる。
「私が率いるシンクタンク『ユーラシア・グループ』では、世界の政治リスクを分析しています。例年、年のはじめに『世界の10大リスク』を発表しています。昨年は、『ならず者国家・ロシア』を1位に選定しました。そして2024年に挙げたリスクの1位は『アメリカ国内の分断』です」
大統領選を軸に、米国では地域、人種、世代、教育水準などさまざまな面で対立が激化し、和解の道が見えない。このブレマー氏の分析のように、いまや国家間の対立よりも国内分断こそ差し迫った問題となるような、かつてない新たな世界の構図を本書は提示している。
×月×日
私は専門を「国際政治」「日本外交」としているが、これらのテーマで議論した時、どんなに丁寧に説明しても納得してもらえない場合がある。そんな中、ピーター・ボゴジアン、ジェームズ・リンゼイ著『話が通じない相手と話をする方法』(晶文社、藤井翔太監訳、遠藤進平訳、2640円)を手にした。
本は「入門:よい会話のための7つの基礎」として「目標(なぜその人…
残り573文字(全文1373文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める