歌舞伎に現代劇に活躍の勘九郎が亡父のあたり役「新三」に初挑戦 小玉祥子
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八月納涼歌舞伎 梅雨小袖昔八丈 髪結新三
8月の歌舞伎座「納涼歌舞伎」の第二部で、歌舞伎から現代劇まで目覚ましい活躍を続ける中村勘九郎が亡父、十八世中村勘三郎のあたり役である「髪結新三(かみゆいしんざ)」の主人公、新三に初挑戦する。
原題は「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)」。幕末から明治にかけての大作者、河竹黙阿弥の代表作のひとつで1873(明治6)年6月に明治の名優、五世尾上菊五郎の新三で初演された。その後、六世菊五郎、十五世市村羽左衛門、さらに六世菊五郎に師事した二世松緑、娘婿の十七世勘三郎に受け継がれた。
店を持たず、商家などをまわって仕事をする髪結いの新三は材木商の白子屋で、縁談の定まった娘のお熊が手代の忠七と恋仲であることを耳にする。利用して金にしようと考えた新三は忠七をだましてお熊をかどわかし、自分の長屋に監禁して白子屋をゆする。白子屋からの依頼を受けて事をおさめにきた大親分の弥太五郎源七をやり込めた新三だが、大家の長兵衛には歯が立たず、手に入れた金も半分奪われてしまう。
新三は名を上げて売り出そうと企み、過去の犯罪で裁かれたことを示す腕の入れ墨を自慢にするような小悪党だが、歌舞伎では鋭さのあるいい男として演じる。
黙阿弥が江戸の夏の風俗を見事に取り込んだ作品でもある。「永代橋川端」では幕が開くと、町の人々が雨を避けるように走る。そこへお熊を乗せた駕籠(かご)が登場し、付き添っている新三の弟分の勝奴(かつやっこ)は、ぬかるんだ道を跳ぶように来る。雨が小やみになると、新三と忠七が相合傘で花道から登場。そこで新三の悪の部分が露呈される。傘を奪って忠七を蹴倒…
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週刊エコノミスト
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