歴代名優が挑んできた難役 義理の息子への“偽りの恋と嫉妬”を菊之助が演じる 小玉祥子
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舞台 秀山祭九月大歌舞伎 摂州合邦辻
歌舞伎座の「秀山祭九月大歌舞伎」昼の部で、尾上菊之助が「摂州(せっしゅう)合邦辻(がっぽうがつじ) 合邦(がっぽう)庵室(あんじつ)」のヒロイン玉手御前を演じている。大名・高安左衛門の後妻だが、義理の息子俊徳丸の命を守るために、偽りの恋をしかけるという歴代の名女方が挑んできた難役だ。
元は武士の僧、合邦道心の家を娘の玉手御前が訪れる。玉手御前の俊徳丸への道ならぬ恋を許せない合邦は拒絶しようとするが、妻で玉手御前の母おとくは夫を説得して中に入れてやる。顔の崩れる病気となって屋敷を逃れた俊徳丸と婚約者の浅香姫は合邦の家に匿(かくま)われていた。
嫉妬にかられた玉手御前は、浅香姫と別れさせるために俊徳丸に顔の崩れる毒酒を飲ませたと口にし、二人の中に割って入る。合邦はやむなく玉手御前を刺す。
安永2(1773)年に人形浄瑠璃で初演された。上下二段からなり、現在でもしばしば上演される人気場面が下の「合邦庵室」。玉手御前の俊徳丸への恋は偽りだが、合邦に刺されて絶命する寸前にすべてを明らかにするまでは、あくまでも真実の恋として演じる。
義母と言っても、玉手御前は「十九や二十歳」と記されるような若さ。菊之助は今年1月31日に没した文楽の豊(とよ)竹咲太夫(たけさきたゆう)から初演(2010年5月)の際に「格は忘れないで老けないように」と教えられたという。
合邦は中村歌六で、今回が2度目になる。
「情のある人で娘はかわいいのですが、不義は許せず、自分が手に掛けなければしようがないと思うわけです」と話す。
高安左衛門には側室から生まれた次郎丸という息子がおり、俊…
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週刊エコノミスト
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