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株価が一時大幅下落したエヌビディア AI半導体1強は当面続く 吉川明日論

価格は破格でも半導体の性能は他の追随を許さない……(エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、Bloomberg)
価格は破格でも半導体の性能は他の追随を許さない……(エヌビディアのジェンスン・フアンCEO、Bloomberg)

 米エヌビディアが8月28日発表した2024年5~7月決算は、市場予想を上回り売上高が前年同期比2.2倍の300億ドル、純利益は同2.7倍の166億ドルと空前の好決算だった。しかし、株価は一時8%下落した。株式時価総額で世界最大の半導体企業になったエヌビディアが今後も倍々ゲームで成長するかどうか、株式市場は測りかねている状況だ。

 同社が販売する「H100/H200」などGPU(画像処理半導体)をベースとするAI(人工知能)アクセラレーター(計算を高速化)製品の主な供給先はマイクロソフト、グーグル、アマゾン、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)などの米テック大手企業だ。好決算発表後の株価下落は、顧客企業のAI投資がどれくらい続くのかという観点から株価の妥当性について一部の投資家が懐疑的になっている証拠であろう。

価格は破格、常に品薄

 エヌビディアが販売するAI半導体製品は、プロセッサーに加えて広帯域メモリーなどを組み込んだシステム製品で、価格は破格だ。最新製品のH200だと1台800万円を優に超えるが、恒常的に品薄で入手困難である。とはいえ、生成AIを組み込んだクラウドサービスを継続・拡充するには、AIへの処理要求を高速処理する同社製品が必須だ。これを何台用意できるかでサービスの優劣が決まってしまうため、需要が供給を上回る状態が続いている。

 同社の強みは、GPU開発で培ったプロセッサー設計の知見と、AI開発に必要なソフトウエア資産、さらには最先端プロセスでの生産で同社を支える台湾積体電路製造(TSMC)との緊密な協業である。処理能力をさらに増強した次期製品「ブラックウェル」は設計・生産上の問題が指摘されており、出荷スケジュールに多少遅れが出る予測だ。しかし同社のジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は現製品の出荷量の増加での高成長を維持することに自信を見せている。

 競合がないわけではない。GPU分野でライバル関係にある米AMDは、昨年対抗製品「MI300」シリーズを投入して採用実績を上げている。テック大手側も、自社のデータセンターで使用する独自開発のAIプロセッサーで差別化を図りながら、エヌビディアへの依存度を低減しようとしている。だが、AIビジネスでの競争の速度が、エヌビディア製品の調達数量に依存する構図に大きな変化はない。

 AI市場はまだ黎明(れいめい)期にあり、当分は技術開発による進化が加速する模様だ。今後はデータセンター向けだけでなく、パソコンやスマートフォンなどに急速に広がる動きを見せている。ただ、こうした製品に搭載される半導体製品は小型で価格も抑えられるため、競合メーカーはエヌビディアが確立した、高価格かつ高収益のビジネスモデルを構築するのは難しい。エヌビディアの1強状態はしばらく続くものと思われる。

(吉川明日論・ライター)


週刊エコノミスト2024年9月17日号掲載

FOCUS エヌビディア5~7月期決算 株価は一時大幅下落でもAI半導体で当面続く1強=吉川明日論

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