「小泉劇場」再現狙う進次郎氏 自民党内の共感はどこまで 人羅格
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候補乱立の自民党総裁選(9月27日投開票)は第1回目の国会議員・党員投票で決着せず、党所属国会議員を主体とする決選投票となる公算が大きい。
小泉進次郎元環境相(43)は父親の純一郎元首相に自身を重ね合わせるイメージ戦略を展開している。石破茂元幹事長(67)は党員票に、高市早苗経済安全保障相(63)は決選投票になった場合の強みがそれぞれ指摘されている。他候補たちも加え、決定打不足の論戦が続いている。
決め手欠く混戦
「業界団体や既得権益の範囲でしか改革が進まない党を変えていく!」。東京・銀座で7日に行った小泉氏の演説は、約20年前の「小泉政権」時代にタイムスリップしたような言い回しだった。
6日の出馬会見の眼目は、政策以上に「総裁になったら(組閣後)できるだけ早期に衆院を解散する」と、当選の際の10月解散を事実上表明したことだ。
43歳の小泉氏は若手のライバル・小林鷹之前経済安全保障相(49)よりも6歳年下だ。首相に就けば初代首相、伊藤博文の44歳より若く、憲政史上最年少。いわゆる「刷新感」は強い。「選挙の顔」としてのアピール戦術だ。
リーダーシップを発揮した異形の宰相、純一郎元首相の残像はいまだに国民にある。進次郎氏は「予告解散」を表明したが2005年、元首相は記者会見で「郵政解散」断行を表明して圧勝した。
出馬会見で「改革」を56回も繰り返した。解雇規制の緩和、政策活動費の廃止や選択的夫婦別姓、憲法改正問題などの「決着」を強調するなど、やはり父親を意識したワンフレーズ風だ。分かりにくく「小泉構文」とやゆされたイメージの修正を図ったのだろう。
菅義偉前首相の後ろ盾も得て党員、国会議員支持のバランスは確かに取れている。ただし、手腕は未知数だ。党内には「進次郎政権ができても、しょせん第2次菅政権」との冷めた見方もある。
菅氏は小泉元首相や、竹中平蔵氏の構造改革路線を継承している。ただし、党内にもこの路線への反発は根強い。格差が拡大した中で、党員らがかつての「小泉改革」をどう評しているのか。とりわけ、解雇規制の緩和は非婚化と人口減少を加速する懸念からも議論が必要だろう。
窮地になると本の表紙を替えるのは、自民のお家芸だ。リクルート事件後の海部俊樹内閣(1989年)、森喜朗内閣退陣後の小泉内閣誕生(2001年)、菅内閣の続投断念後の岸田文雄内閣(21年)への移行などだ。
柳の下にドジョウは何匹でもいると考えているため、党の体質は変わらない。今回も、岸田文雄首相を不出馬に追い込んだ「政治とカネ」を巡る議論は低調だ。決選投票は国会議員票の動向で決せられる。裏金問題のけじめや再調査などに踏み込むほど、関係議員が多い安倍派などの「浮動票」が離反するリスクを候補たちは重視している。
派閥の影響も中途半端だ。主要派閥は解散宣言したが、脱派閥というよりは、派閥再編的な様相だ。旧派閥…
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週刊エコノミスト
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