教養・歴史 書評

研究論文でも取材ルポでもなく、愛ゆえに裏側を書く一冊 ブレイディみかこ

×月×日

『イランの地下世界』(若宮總著、角川新書、1056円)を一気読みしてしまった。

 わたしは英国在住だが、親友と呼べる人はイラン出身で、彼女から漏れ聞くイランは表層的イメージとはずいぶん違うことを知っていたからだ。それは友人自身にも言えることで、元同僚であり、共に無料託児所を運営したこともある彼女は、厳格でしっかりとした貧困支援活動家なのだが、その一方で、真面目にルールを守っているふりをして全くそうでないことがある(掟(おきて)破りをしながら飄々(ひょうひょう)とウインクしている感じ)。

 法律は破ってナンボみたいな感覚があるとか、禁酒国のくせにみんな飲んでるとか、ナンパのハードルが低いとか、友人から聞いた通りのイランの実情が本書には書かれていて、随所で笑った。イスラム体制の権威主義国家のはずなのに、巷(ちまた)ではアナーキーな世界が展開されていて、なんかこう、憎めない人たちなのだ。ホントよく喋(しゃべ)るしね(彼らと同じエネルギーを会話することに注げるのは、日本人では明石家さんま…

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