トランプ2.0に身構える独産業界 関税発動は製薬・自動車に打撃 熊谷徹
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11月5日の米国大統領選挙でトランプ候補が勝利したことで、ドイツの政界・経済界では貿易や安全保障への悪影響について懸念が強まっている。
独日刊紙『南ドイツ新聞』は11月6日付電子版で「ショルツ首相はソーシャルメディア『X』に、トランプ候補の勝利を祝福するコメントを書いたが、同時に『欧州は結束を固めなくてはならない。欧州には大きな責任が生じる』という声明を出した」と報じた。独第2テレビ(ZDF)ベルリン支局のツィンマーマン支局長は、ニュース解説で「トランプ氏は1期目でも意表を突く行動が目立った。ドイツ政府にとって厳しい時代が訪れる」と述べた。
独保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』は11月2日付紙面で、「多くの経済学者たちは、トランプ氏が再選されて、『世界からの全ての輸入品に20%の関税を導入し、中国からの輸入品には60%の関税を課す』という方針を実行した場合、ドイツの輸出産業は深刻な打撃を受けると予想している」と報じた。
FAZによると、ミュンヘンのifo経済研究所は、トランプ氏がこれらの関税政策を実行すると、ドイツの米国への輸出額は、約2%減ると予想する。同研究所は、ドイツ企業の米国での自動車販売台数が32%減少し、米国向け医薬品の販売量も35%減ると予想している。ドイツ経済研究所(IW)は、米国の関税引き上げの最悪のシナリオが現実化すると、2028年にはドイツの国内総生産が、23年に比べて1.5%減る可能性があると指摘している。
ドイツにとって米国は、中国に次ぐ世界で2番目に重要な貿易相手だ。特に独企業にとり米国は世界で最重要の輸出市場である。独連邦統…
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週刊エコノミスト
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