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小説 高橋是清 第4話 アラン・シャンド=板谷敏彦

     <新連載>

     慶応2(1866)年の冬、横浜大火によって焼け出された是清たちは愛宕下の仙台藩中屋敷に戻ってきた。

     この年、年初には坂本龍馬の斡旋(あっせん)で薩長同盟が成り、秋口からの第二次長州征伐では薩摩藩が出兵せず征伐はならなかった。

     是清が戻ってみると屋敷の様子は一変していた。仙台藩中屋敷は正方形で約1万坪ほどだが、以前は奥が馬場で、壁沿いにコの字型に藩士の住む長屋が60軒ほどあり、あとはがらんどうの空地だった。ところがそこに家庭菜園のように区画を設けて、足軽どもにキュウリやナスを栽培させていたのだった。

     ここで当時の仙台藩と是清の関係について少し説明しておく必要があるだろう。

     仙台藩は藩祖伊達政宗公以来厳密な身分制を敷いていた。藩士は門閥・平士・組士・卒の4区分に分けられてそれぞれの中にまた詳細な区分がある。最下級の卒は凡下(ぼんげ)とも呼ばれ、藩内では士分とは認められず、百姓として扱われた。後に是清が渡米する際の出国許可証には、仙台藩百姓と書かれてあった。養祖母喜代子が士分にこだわり、教育に力を入れたのはこのためだ。

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