小説 高橋是清 第5話 初の海外渡航=板谷敏彦
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慶応3(1867)年是清13歳、春も終わろうかという頃、是清たちに海外渡航の許可が下りた。幕府はその前年に商用・留学のための海外渡航を解禁したばかりだった。
是清の一行は、本来は勝海舟の嫡男小鹿と、そのお供の勝塾門下の仙台藩士富田鉄之助、庄内藩士高木三郎の3人であった。勝海舟は、小鹿の私費留学の許しを幕府に請い、富田鉄之助へは仙台藩から年1000両もの学費が支給された。この案件を担当した仙台藩の大童信太夫が、是清と鈴木知雄を富田の従者として同道させることにしたのである。
仙台藩士富田鉄之助はこの時すでに32歳、富田家は門閥の中でも上位、石高2000石は大身である。富田はこの留学中に明治維新を迎えるが勝海舟に諭されて留学を継続した。
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週刊エコノミスト
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