アメリカ 富豪アジア人の群像劇がヒット=冷泉彰彦
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2013年に3部作の1冊目が刊行された『クレージーでリッチなアジア人』。17年までに全3作が完結し、ベストセラーとなっていたが、この18年8月にハリウッドで映画化、公開にあたって、改めてペーパーバックとして発売されている。
作者は、シンガポール系アメリカ人のケビン・クワン。1950年生まれで、長くアメリカの雑誌出版界で写真家やデザイナーを務めていた才人である。本作は、クワン自身がシンガポールの富豪一家の出身ということから、自身の経験に根ざした「シンガポールのスーパーリッチ」のライフスタイルを微に入り細に入り描写したことで人気を呼んだ。
内容は、一種の群像劇。中国系のアメリカ人カップルの視点から、シンガポールにおける経済繁栄の実態と、男女の駆け引き、幅広い華僑コミュニティーの共通点と差異などを活写したものだ。話題となったのは、映画化にあたって「ホワイト・ウォッシュ」、つまり観客に違和感を与えないように主役に白人俳優を起用して翻案する手法を、原作者のクワンが「拒否」したエピソードだ。本作の場合は元来が、華僑コミュニティーにおける「…
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週刊エコノミスト
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