週刊エコノミスト Online編集後記

編集部から 北條一浩/下桐実雅子

編集部から

 先日、「かこさとしのひみつ展」を見に行った。今年5月に92歳で亡くなった絵本作家だが、『だるまちゃんとてんぐちゃん』『からすのパンやさん』などで知られている。彼の絵本には、同一平面にたくさんの小さなモノが描きこまれている、という特徴がある。

『だるまちゃんとてんぐちゃん』なら、見開きいっぱいにさまざまな色、形のうちわや帽子が描かれ、『からすのパンやさん』はあらゆる種類のパンが並んでいる。登場キャラはいても、うちわやパンは彼らを引き立てる小道具どころかこっちがメインで、しかもどれか一つに代表させてその他おおぜい、として扱われるのではなく、すべてのうちわやパンが等価なのだ。主役も脇役もない、全部同じ平面にいる世界って何? 私たちはもしかしたら、代表や著名性に慣れすぎてしまったのでは? そんなことを思いながら、娘と妻と帰路に着いた。

(北條一浩)

 木漏れ日が美しい表紙の本が届いた。タイトルは『Shinrin-yoku』(森林浴)。著者の宮崎良文・千葉大教授の元に昨年、英国の出版社から本を書かないかと依頼があり、米国、フランス、ポーランド、韓国など14カ国で出版された。

 宮崎さんは1990年代から森林浴の効果をフィールド実験で調べてきた第一人者。例えば、都市部にいるより、森の中にいる方がストレスホルモンの数値が低い。子どものころ、土や花、木に触れると体がリラックスするのはなぜだろうと、疑問に思ったのが原点だ。

 日本発の森林浴という言葉を世界に広めようとしたが、外国人には発音しにくく一度は断念した。ところがここ数年、海外でも「森林浴」が使われだし、関心が高まっているという。

 スマホやパソコンに向かうことが多い現代社会だが、紅葉の季節、木々に囲まれるのもいいかもしれない。

(下桐実雅子)

■来週のエコノミスト

次号10月9日号 10月1日(月)発売

キャッシュレス決済戦国時代

LINEやアマゾンなど新規参入続々

名器ストラディバリウスの謎/片山杜秀×梅津時比古「楽器と思想」

都合により変更する場合があります。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事