週刊エコノミスト OnlineBook Review

『良き社会のための経済学』 評者・土居丈朗

     知的好奇心に満ちた読者に向け、経済学の考え方をわかりやすく解説した書である。

     著者は、2014年度のノーベル経済学賞を受賞した経済学の世界的権威。本書には、大家ならではの内容が多く盛り込まれている。

     著者が経済学者として同業の経済学者の生態を論評できるのは、学界で研究を極めたからこそである。経済学者が、日ごろどんな視点で社会を見つめ、政策提言をしているか。巷間で必ずしも高くない経済学者の評判の原因に鋭く言及しつつも、経済学者への悪評の誤解を解いている。読者が、経済学者の言動をどう理解すればよいか、大いに助けになろう。

     政治的意見を表明する学者は、何かとレッテルを貼られる。左派か右派か。ケインジアンか新古典派か。聴衆は、議論の内容をのべつ忘れてしまい、自分の政治的傾向から結論を下すことが多いから、自分と同じ側の学者ならその意見を好ましく感じ、反対の側なら嫌いだと感じる。学者の仕事は、既に存在する知識を疑って、新たな知識を創造することだが、レッテル貼りによって、学者の真意は伝わらなくなってしまう。

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