教養・歴史Book Review

『アメリカ経済 成長の終焉(上・下)』 評者・上川孝夫

     リーマン・ショックから10年になるが、「長期停滞論争」が続いている。米連邦準備制度理事会(FRB)が「金融正常化」へかじを切り、人工知能(AI)やロボット技術などの登場で、米国経済の成長を楽観視する向きがある一方、経済成長の黄金期は終わったとの主張もある。本書は後者を代表する最近作だ。

     本書は説得力ある説明を行うために、南北戦争(1861~65年)以降、最近までの米国の経済成長の跡を克明に追っている。結論は明快だ。1870~1970年は経済成長が進んだ「特別の世紀」であり、中でも1920~70年は労働生産性が高かった。しかしこれに続く1970~2015年は減速しており、特にインターネット・バブルの10年(1994~04年)の影響が一巡した後はペースが落ちている。これは楽観派の主張とは食い違っている。

     産業革命は18世紀後半の英国に続いて、19世紀後半の「第二次産業革命」で、ラジオ、映画、電気、自動車など、人々の生活を一変させる「大発明」が続いた。著者によれば、これに続くのが現在の「第三次産業革命」で、1950年代後半の大型コンピューターに始まるデジタル時代を包括する概念として捉えている。しかしイノベーションのスピードは確かに凄まじいが、第三次産業革命は情報通信技術に偏っており、第二次産業革命…

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