『検証 アベノミクス「新三本の矢」 成長戦略による構造改革への期待と課題』 評者・井堀利宏
有料記事
編者 福田慎一(東京大学大学院教授) 東京大学出版会 2800円
現状の構造欠陥分析し、持続的成長戦略を模索
安倍政権の経済政策(金融緩和と財政出動と成長戦略を三本の矢としたアベノミクス)は需要刺激に偏重した結果、日本経済の活性化につながっていない。2015年には「強い経済」「社会保障の充実」「子育て支援」の新三本の矢で日本経済の再生を図るとし、17年に「生産性革命」と「人づくり革命」の政策パッケージがとりまとめられた。しかし、それらを実現する具体的な政策手段は不透明であり、曖昧な政策願望に退化したように見える。
本書は新たな段階に入ったアベノミクスを多角的に考察し、日本の成長戦略が抱える課題を整理することで、持続的成長への展望を解説したものである。急速に進行する少子高齢化と巨額に累積した財政赤字という二つの構造的問題が将来不安や悲観的期待を助長して、現在の総需要にもマイナスの影響を与え、デフレの長期化につながっている。こうした構造問題を解決しないと、明るい将来展望は描けない。
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週刊エコノミスト
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