教養・歴史Book Review

『進歩 人類の未来が明るい10の理由』 評者・楠木建

     人間の状況評価には遠近の歪(ゆが)みがある。近いものほど粗(あら)が目立ち、遠いものほどよく見える。メディアは日本の状況がいかに悪いかを論じる記事を連日発信する。カネとエネルギーに溢れる中国はダイナミックに成長し、アメリカではシリコンバレーがイノベーションを次々に生み出している。それに比べて日本の閉塞感と体たらくは何だ──。

     これは空間的な例だが、時間軸でみると遠近の歪みはさらに増幅する。「今は最悪、昔は良かった……」に人々の評価は流れる。「そんなことはない!」と最初から最後まで全力で主張するのが本書である。

    残り912文字(全文1170文字)

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