教養・歴史Book Review

『ドローンの哲学 遠隔テクノロジーと〈無人化〉する戦争』 評者・池内了

著者 グレゴワール・シャマユー(哲学研究者) 渡名喜庸哲訳 明石書店 2400円

「人道的」と称される武器の本質を徹底検証

 本書で議論するドローンとは、「武器を装備した無人飛行機」のこと。その機能を強調すれば「ミサイルを装備した飛行型高解像度ビデオカメラ」と言えるだろうか。ハンター・キラー(狩猟─殺人者)ともプレデター(捕食者)とも呼ばれる。現在ではロボットによる自動操縦とともに、戦場から遠く離れた基地で空軍兵士がオペレーターとなって遠隔操作を行うという、二つの制御様式が組み合わされた「無人偵察・戦闘機」というのが正確な定義だろう。

 本書は、ドローンの技術的・戦術的な側面を詳しく語りつつ、その精神病理学、死倫理学、哲学的原理、政治的意味など、幅広い観点から分析したものである。おそらく、空中ドローンだけでなく、今後、陸上ドローン、海上ドローン、潜水、地下などへと、ドローン技術は拡大され、戦争の概念や様相を大きく変化させていく可能性がある。そのことを現実として考えさせる良書である。

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