教養・歴史Book Review

『名古屋円頓寺商店街の奇跡』 評者・新藤宗幸

「名古屋円頓寺商店街の奇跡」 脱「シャッター通り」へ 空き店舗活用で活路  
「名古屋円頓寺商店街の奇跡」 脱「シャッター通り」へ 空き店舗活用で活路  

著者・山口あゆみ(フリーライター、編集者) 講談社+α新書 800円

脱「シャッター通り」へ 空き店舗活用で活路

 地方都市ばかりか大都市にも空き家・空き店舗の目立つ商店街が存在する。だが、「シャッター通り」再生の試みは成果に乏しいのが実情だ。

 本書の舞台は、大規模再開発が進む名古屋駅から徒歩で15分程度の円頓寺(えんどうじ)商店街である。かつては名古屋の中心市街地のひとつだった。徳川家康による名古屋築城以降、城下町として栄え、明治期に入って一段と商店街としての整備が進んだ。だが、東海道新幹線の開通以降、徐々に衰退した。それが現在では若者ばかりか外国人も集う盛り場として再生した。それは本書の主人公である建築家の市原正人と円頓寺商店街に残る人びとの知恵と努力の結果だ。

 市原は名古屋で生まれ育ったが円頓寺かいわいの出ではない。三味線の師匠に連れられ昼食をともにした円頓寺商店街に、仕事のあと足を向け飲食店をのぞく。通りには猫さえいないが飲食店は満ぱいだ。彼は不思議と魅了される。2007年、ここを活性化させようと「那古野(なごの)下町衆(那古衆)」というボランティアグループが結成される。外部の者が多かったが、商店街の再生を望む商店主もメンバーとなった。市原はこのグル…

残り658文字(全文1193文字)

週刊エコノミスト

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