教養・歴史Book Review

『現代経済学 ゲーム理論・行動経済学・制度論』 評者・池尾和人

    「思えば遠くへ来たもんだ」という歌があるけれども、経済学の現状に関しても同様の感慨を抱かざるを得ない。すなわち、この半世紀弱の間に経済学は大きな転換を経験した。現代の経済学は、市場理論を中核とした伝統的な経済学からは著しく様変わりし、多様な広がりをもったものに変貌してしまっている。

     ただし、こうした経済学の現状は必ずしも広く知られているわけではなく、経済学を旧来的なイメージのままに捉えている人たちも少なくないと思われる。そうであれば、「現在の経済学の多様な進化の様相をできるだけ一般の人にわかりやすい仕方で解説すること」には意義があるとして、執筆されたのが本書である。 本書では、最初に市場理論の到達点を復習した上で、ゲーム理論の浸透、「期待」の役割を重視するマクロ経済学、行動経済学、実験経済学、制度の経済学、経済史研究からのフィードバックの各々に関わる研究の進展が紹介されている。そして最後には、これからの経済学が向かうべき方向性をめぐっての著者独自の考察が行われている。

     1980年代にミクロ経済学とゲーム理論の一体化が進んだことが、経済学の大きな変貌を促すことになった。その流れの中で、市場取引が円滑に行われるためには、それを支える非市場的な制度が必要なことが認識されるようになり、制度の意味と役割をめぐるさまざまな議論が展開されるようになった。

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