『経済学は悲しみを分かち合うために 私の原点』 評者・服部茂幸
有料記事
著者 神野直彦(日本社会事業大学学長) 岩波書店 1800円
自らの生を振り返り、経済学の使命を問う
本書は日本を代表する財政学者の一人、神野直彦氏の自伝である。
氏は真理を追究する知識人と真理を切り売りしているにすぎない知的技術者の区別を強調する。けれども、こうした区別自体が実用主義一点張りの今では廃れた、古きよき時代の考えと言えよう。
第2章から第5章までは、幼少期から研究者となる前までの話である。立派な人物にしばしば見られるように、著者も母から立派な教えを授かった。それは「お金で買える物には価値がない」と「偉くなるな」である。後者は、一代で財をなした祖父が、財をなすために嫌な思いをしたことから、孫にはこうした苦労をさせたくないと考えた結果だそうである。財務省の公文書偽造など一連のスキャンダルを考えると、これも現在という時代と…
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週刊エコノミスト
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