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週刊エコノミスト Online Book Review

『20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る』 評者・白井さゆり

日本人起業家が途上国に電子マネー経済圏

 本書の世界観は、途上国の村づくりにビジネスとして参加し成功を収めた著者の経験にもとづく、ユニークなものだ。世界は「現実」と「ものがたり」から成り、「現実」はエネルギーや食料など人間生活に根源的で物理的に存在しているのに対し、「ものがたり」は人間が作った宗教、思想、国家、法律、金融システムなどの物理的に存在しない仕組みだとみる。しかも「現実」に合う「ものがたり」は可変的で、エネルギー・食料などの生産が拡大する「資源拡張期」と縮小する「資源制約期」とでは異なるとみる。資源拡張期には、自由競争によって上位1割の富裕層が生産物の9割を独占し、残る9割の人々が1割の生産物しか分け合えられないとしても、1人当たりの分け前が増えていくので大きな社会問題にならない。ところが現代のような資源制約期では、残る9割の人々の分け前(所得)が増えないか減っているので、次第に国家に不満を募らせて社会不安が起きやすくなる。独裁政権を倒した2010年の「アラブの春」もこうした不満が背景にあり、民主化を実現しても…

残り699文字(全文1165文字)

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