『ビットコインはチグリス川を漂う マネーテクノロジーの未来史』 評者・後藤康雄
有料記事
著者 デイヴィッド・バーチ(ビジネス・コンサルタント) 松本裕訳 みすず書房 3400円
「マネー」が人を読む? 主客逆転の未来図を提示
映画「ルパン三世 カリオストロの城」の冒頭、大量のお札をばらまきながら主人公ルパン三世が愛車で駆け抜ける。お金=マネーは時に人を陶酔させ、時に狂わせる。
社会の発展を支えてきたことに間違いはない、そのマネーに大きな転機が訪れている─本書は、そうした認識のもと、特に「デジタル通貨」を念頭に、マネーの過去、現在、未来を考察した注目の書である。著者の基本的な視座は各時代のテクノロジーだ。数千年にわたるマネーの歴史をひもとき、テクノロジーがマネーの形を、ひいては社会を左右する様を壮大なスケールで描く。
とりわけ目をひくのが未来予測のパートである。1990年代の実験的電子マネー「モンデックス」への関与をはじめ、実務の一線を走り続けてきた著者は、現在と異なる世界を大胆に予想する。中央銀行による通貨の独占的発行は終焉(しゅうえん)し、マネーの機能を果たす電子的なサービスが自由に提供される。そこで鍵となるのは社会の中での個人の「アイデンティティー」である。デジタルIDなどで識別された個人が、所属コミュ…
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週刊エコノミスト
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