週刊エコノミスト Online2018年の経営者

葬儀・仏壇・墓のネット仲介で急成長 清水祐孝 鎌倉新書会長 編集長インタビュー/928

    清水祐孝 鎌倉新書会長
    清水祐孝 鎌倉新書会長

    葬儀・仏壇・墓のネット仲介で急成長

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 葬儀や仏壇、墓地の利用者と業者を仲介するサイトの運営で急成長しています。

    清水 2000年から情報サイト「いい葬儀」を立ち上げ、ネットビジネスに進出しました。スマートフォンの普及で問い合わせも増え、15年12月には東証マザーズに上場、17年7月には東証1部に市場変更しました。18年1月期通期の売上高は前期比で28・3%伸びています。

    ── 会社の成り立ちは。

    清水 もともとは、父が創業した仏教書の出版社でした。証券会社に4年ほど勤めた後の1990年に入社したのですが、売り上げ4000万円に対して借金が8000万円くらい。業界向けの月刊誌や販促冊子の販売を始め、6年ほどでなんとか返済しました。そのころ、インターネットが普及し始め、ビジネスに活用できるのではと「いい葬儀」を立ち上げました。

    ── 当初からネットで仲介していたのですか。

    清水 最初は葬儀マナーを紹介する程度でした。あるとき、サイトを見た人から電話があったんです。「いま父が亡くなったが、どうしていいか分からない。お宅なら葬儀社を知っているかと思って」と。近くの葬儀社に連絡し、対応してもらうと、喜んだのは利用者よりも葬儀社でした。彼らは集客のために膨大な広告費を使っていました。ネットでマッチングして仲介料を業者からもらっても、広告費よりはるかに安い。ビジネスになると思い、ネット仲介を始めることにしました。03年に仏壇とお墓も同様のサイトを立ち上げました。

    ── 提携業者はどう集めたのですか。

    清水 業界誌を出していたので、業界では「鎌倉新書」の名は知られており、話がしやすいという強みがありました。営業活動をし、業界の会合で「ネットで客が来るらしい」という話が広がり、現在は約900社の葬儀社と提携しています。仏壇は約5000店舗、墓地・霊園は約8000件を掲載しています。

    ── 収益はどう得ていますか。

    清水 仲介した業者と利用者の契約が成立すると、業者から支払われる成約料が収益の大半を占めています。料率は契約金額の15%程度が多いですが、資料送付や現場見学のご案内といった営業支援をすることで上げてもらうこともあります。

    「終活」サービス充実

    ── 売り上げの構成は。

    清水 お墓の仲介が約6割、葬儀が約3割、仏壇が約1割です。お墓は、不動産探しと条件が似てネットとの親和性が高く、最初に経営資源を傾注したため、最も構成比が高くなっています。ただ、葬儀は市場規模は1兆円超と最も大きく、上場後に人材を集めて力を入れているため、伸び率が高いのが特徴です。お墓が年20~30%増なのに対し、葬儀は年60%増くらいのペースで伸びています。

    ── 葬儀のネット仲介では競合他社もいますが、強みは。

    清水 例えば「火葬で19万8000円」とか「家族葬で39万8000円」というように、いくつかの価格帯を先に設定している他社もありますが、うちは価格は紹介した葬儀社と利用者が相談してもらうスタイルです。葬儀は地域によってやり方も宗教的背景も違い、一律プライスがなじまない面もあります。

     強みは、24時間体制のコールセンターで、利用者の不安点を解消しながら相談に乗れるところです。利用者の立場に立ち、複数の選択肢を提供するので安心と言う方が多いです。だからこそ、葬儀の後も、仏壇やお墓も探さなきゃね、という話につながります。こうした「終活」にまつわるサービスのラインアップを増やしていくことが我々が生きていく道だと思っています。

    ── 具体的には。

    清水 自宅の売却や解約、相続手続き、公共料金の解約など、人が亡くなると必要な手続きを代行する「死後事務委任」のサービスは、これから本格的に取り組もうと思っていることの一つです。

    ── 葬儀のあり方は変わってきていますか。

    清水 東京では10人のうち8~9人はお寺とのつきあいがない。それでも型通りの葬儀をすることが多いですが、10年、15年たてば状況が変わってくると思っています。新規事業の「Story(ストーリー)」では、火葬した後、型にとらわれずに故人をしのぶ「お別れ会」をプロデュースしています。会場も葬儀場にこだわらず、屋外やカフェなどニーズに応じて演出します。

    ── 墓はどうですか。

    清水 死者数はこれから20~25年くらいは増えていくと推計されています。一方で、田舎にある墓を墓じまいして、東京など都市部に移す動きは今後、増えていくでしょう。核家族化が進んで親戚付き合いもなくなっていき、コインロッカー式の納骨堂などに集約されるようになっていけば、墓の単価は落ちていくので市場規模は微減となるでしょう。

     お墓もお寺の檀家制度も、農業など1次産業が中心で人々が同じ場所に住み続けていた時代のビジネスモデル。今は転勤などで暮らす場所が転々と変わり、その前提が崩れている。ビジネスモデルの方をニーズに合わせて変えていく必要があります。社会の変化に応じて、常にユーザー視点でサービスを提供していきたいですね。

    (構成=岡田英・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 自ら始めた業界誌の取材で、全国の石材店や葬儀社、仏壇店を飛び回って話を聞き、記事を書いたりまとめたりしていました。

    Q 「好きな本」は

    A 『幾山河 瀬島龍三回顧録』(瀬島龍三著)です。戦争で悲惨な目にあった人たちが、今の日本の礎を築いてくれた。いま我々はそのインフラで食っているという感謝があります。

    Q 休日の過ごし方

    A ゴルフや読書。ゴルフは仕事先よりも友人と行くことが多いです。


     ■人物略歴

    しみず・ひろたか

     1963年生まれ。大阪府立寝屋川高校卒業。86年、慶応義塾大学商学部を卒業後、国際証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。90年、父の故・憲二氏が創業した鎌倉新書に入り、2002年に社長に就任。17年9月から現職。東京都出身、55歳。


    事業内容:葬儀など利用者と業者の仲介サイト運営。月刊『仏事』など仏教・葬儀関連の出版

    本社所在地:東京都中央区

    創業:1984年4月

    資本金:7億8565万円(2018年7月末現在)

    従業員数:108人(18年7月末現在)

    業績(18年1月期、単体)

    売上高:17億900万円

    営業利益:4億500万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    12月17日号

    勝つ負ける地銀ランキング18 弱まり続ける「稼ぐ力」 “利益率かさ上げ”のツケ ■大堀 達也/吉脇 丈志19 最新 地銀全103行収益力ランキング23「粉飾倒産」でヤケド負う ■編集部24 東証改革 時価総額500億円未満が1部市場に31行 ■編集部27 “無風”の減益 「益出しのネタ」尽きる “苦 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ PR

    最新の注目記事

    ザ・マーケット