教養・歴史Book Review

『実務で使える 戦略の教科書』 評者・楠木建

     経営戦略や事業戦略についての実務家向け解説書は世にあふれている。しかしその多くは「実務家向け」の「わかりやすい」「解説」を意図するがゆえに、結局、戦略とは何かがわからないまま終わってしまう。

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     多くの実務家向けの解説書はSWOT分析(経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法)やファイブフォース・モデル(企業を脅かす五つの脅威)、バリューチェーン(価値連鎖)などのフレームワーク(問題解決に役立つ思考の枠組み)を解説し、その使い方を伝授する。しかし、そこから導出される情報がどのような意味を持ち、全体としての戦略のどこに作用し、他のフレームワークとどんな関係にあるのかまでは踏み込まない。こうした不満を一掃してくれるのが本書である。

     戦略の定義を論じる冒頭の章からして味わい深い。戦略とは目的に対する手段である。しかしそれは「選択された手段」でなければならないと著者は言う。一つしか有効な手段が存在しないのであれば、それは「追い込まれている」のであって、戦略ではない。複数の代案を優先順位づけした後に選び取られた何かが戦略であり、戦略とは「何をやらないか」を決めることにある。戦略の本質を鮮やかに突いた定義だ。

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