経済・企業

西川・日産社長会見(2018年11月19日)一問一答

日産のカルロス・ゴーン会長の逮捕を受けて記者会見をする西川広人社長(左)=横浜市西区で2018年11月19日夜
日産のカルロス・ゴーン会長の逮捕を受けて記者会見をする西川広人社長(左)=横浜市西区で2018年11月19日夜

西川社長の冒頭発言はこちら

――ゴーン氏の今日の動きについて。羽田空港に午後4時半ごろ「N155AN」という飛行機で到着したという話もある。そこで東京地検に任意同行されたという状況でいいか。

西川 先ほど申し上げた通り、捜査そのものの状況について、あるいは本人の確保の問題について、私から申し上げるべきではないと思いますので、検察の皆さんの発表の通りという形で理解をしていただければいいと思います。

――1点は、こうした重大な会見の場合、通常は弁護士とか調査担当者が同席するのが通常のパターンだが、今日は西川社長1人で会見している。1人で会見しているのは、何か考えがあってのことか。2点目は、日産ブランド、車を愛している人たちは大きなショックを受けた。大きな騒ぎになっていることに対し、日産を愛している人への一言を。

西川 二つ目の質問にも関係するんですが、実は先ほど申し上げた通り、並行して捜査が進んでいるということで、なかなか我々も皆さんに内容あるいはお伝えするタイミングも、それなりに制約がございます。これはやむを得ないことであると思っていますので、その部分は検察当局の皆さんに全面的に協力をしていきたいと思っておりますけれども、その中で今日許されるタイミングということで、できるだけ早くまず私の方から私の生の言葉ですね、先ほど自分の感情というか、ここはすべてをなかなか言葉にしきれませんけれども、まずは私の言葉でお伝えしたいということで、そういう機会を極力早く作りたいということでまず設定をさせていただいたということが正直な気持ちでございます。もちろん、時期が来れば詳細等の説明、あるいは社内調査の結果等々を、皆さんにきちんご説明できる場はあると思います。その時にはもちろん、専門家の皆さんの同席をお願いしたいと思いますけれども、今日は私もある意味で大きなショックを受けておりますし、その部分は大変その、この重大事案で驚かせて不安を与えて申し訳ないんですけれども、まず私の方から申し上げたいというつもりで臨んでいるつもりでございます。で、多くの日産ファンという話もございました。先ほど申し上げた通り、さまざまな皆さんからサポートをいただいてきたわけでございますし、そういう中でこれはもちろんカルロス・ゴーン個人だけではないと思いますが、そういう皆さんにこういうような事案が起きてしまったということ、とにかく大変申し訳ないという気持ちでいっぱいでございます。

 我々ができることは、やはり先ほど申し上げましたけれども、ガバナンスに関して「猛省」と申し上げましたけれども、やはりよくよく振り返ってみますと、それが原因とは言いません。原因とは言いません。もちろん、1人に権力が集中していても、立派に仕事をされている方はたくさんおられますんで、そういうことではなくてですね、そういう誘引を作ってはいけないというところも大きな反省でありますし、長年実力者として君臨してきたことによる弊害というのは大きいということを私も今、痛感をしておりますし、ここを先ほど申し上げた通りガバナンスの面でも事業運営の面でも、これが目に見える形で問題を解消していくというか、これを見ていただくことしかないかなというふうに今は思っております。それ以上はなかなか申し上げられないです。

――今回内部通報があって監査役から問題提起あったということだが、いつごろ内部通報はあって、どれぐらいの期間をかけて社内調査をやってきたのか。

西川 お答えしたいところはやまやまなんですけれども、そこも含めて検察の皆さんとご報告して連携しているところがありますので、今現時点ではそこはちょっとお答えは控えさせていただきたいなと思います。いずれタイミングを見て、お話しできるタイミングでお話しできるようになると思います。

――3点の不正行為のうち、2点目と3点目の違いは。

西川 (3点目の不正は投資資金ではなく)経費、経費ですね。

――不正な経費? それはどのような性格か。

西川 二つ目が、もう一度言いますと、目的を偽って私的な目的で当社の投資資金ですね、投資というのは経費ではなくて投資する方のお金ですけれども、これを使ったということが二つ目の不正であります。それから三つ目は、これは投資資金ではなくて、会社の経費ですね、経費の不正使用という不正行為と。大きく開示の問題と投資資金の不正使用ということと経費の不正使用と、この三つだというふうに申し上げたつもりであります。

――日産側としては不正行為を働いたのは今回逮捕された2人だけと考えているか。もう一つは、他の役員の感想は。怒っているのか、裏切られたと感じているのか。

西川 はい、分かりました。あの、先ほど申し上げた通り、この2人が我々の調査の結果、首謀であるということは確認をしていますが、それ以上は今のところ捜査の関係もありますので控えさせていただきたいと思います。それから、役員の反応ということでございますけれども、これもですね、実は役員がこの件を知ったのはつい先ほどなんですね。事案の中身から、やはり非常に秘匿を注意しておりましたので、彼らも今それを聞いて、いったい何があったんだというような感覚であろうと思います。そういう中で、先ほど状況をシェアして申し合わせましたのは、やはりとにかく従業員あるいはお取引先の皆さまが非常に心配していると、大きな不安を抱えておられると思いますので、そこの業務ですね、ここを不安定にしないように全力を尽くしましょうということと、あとはやっぱり従業員の皆さんが非常に不安に思っているので、ここは役員の方が先頭に立って日常的な業務運営に影響が出ないようにしっかりとリードするということ、それともちろん捜査には全面協力をしていくということを申し合わせたところでございます。

――1点目は、日産のプレスリリースでは、私的流用を追及するとある。しかし、逮捕されたのは特別背任ではなく金商法だった。これについての受け止めは。

西川 やはり捜査に関することですので、今のご質問は、そこについて私が何らの見解を申し上げることではないと思っておりますけれども、先ほど申し上げた通り社内での調査、これ状況も全部ご報告しておりますし、捜査の方も並行して進めていただいているということですけれども、その中でいわゆる、何て言っていいんでしょうかね……。捜査の対象なり刑事罰の対象という、この部分について私はなかなか判断はできません。

 ただし、先ほど申し上げた通り、それぞれ大きく三つの事案があるわけですけれども、そのどれをとってみても、あるいは全部合わせてみても、会社としてみた場合には、取締役の義務に大きく反するどころではなく、当然解任に値するということ、こういうふうに理解をしておりますし、この部分については詳細な調査の結果を、専門家の皆さん、専門家というのは弁護士の先生ですけれども、見ていただいて、これは解任に値をするということ、そういうようなご意見もいただいておりますので、その三つの点で私は解任の提案をしようと思っております。どの事案を見ても、これがいわゆる捜査の対象として刑事事件になるかどうか、これは私は判断できませんが、会社としてみれば当然許容はできない、虚偽であったり支出の目的のまったく私的なものであったり、ということであるというふうにご理解いただければと思います。すみません、ちょっと説明が舌足らずで申し訳ないですけれども、そういうふうに理解をしています。

――解任の提案を決めたのはいつごろか。

西川 えーっとですね、実際にその方向で私が事案を見て、先生の皆さんからもアドバイスをいただいたのは、社内調査がまとまった段階でございます。これまた、いつかということもちょっと申し上げにくいんですけども、社内調査がまとまった段階でそういう判断をいたしました。

――不正はいつごろから行われていたと考えているのか。検察の発表では(平成)23年以降とあるが、公訴時効にかからない分だと思うので、もっと昔から会社として把握しているのではないか。

西川 えーっとですね、そこについても、ちょっと今は申し訳ないです。内容を申し上げるのは妥当なタイミングではないと思いますので。いずれオープンにしたいと思います。

――かなり長期にわたって行われていた認識か。

西川 長きにわたってということだと思います。

――ゴーン氏は日本で納税していたのか。日本で納税していれば、源泉徴収から報酬額は把握していたのでは。

西川 ちょっと私これ、お答えできないんですが、そこは事実を確認できれば確認したいと思いますが、当然日本で納税していたというふうに思います。はい。すみません、これそう思っていますけども、もし違っていたら後で訂正をさせてください。

――これだけ会社、株主を裏切る行為をした場合、会社として告発する意思はないのか。株主に代わって、ゴーン氏を訴えるつもりはないのか。

西川 あの、おっしゃる点、よく分かります。そこは今日、お答えすることはできませんが、当然その、何ていいましょうか、、に値をするような事案であるということは認識をしております。そこをどうするかは、これから判断をしていきたいと思いますけれども、今の段階でこうするああするということを申し上げるのは尚早だと思いますけれども、ご質問の趣旨はその通り、よく分かります。

――報道によると、過少申告で50億円程度しか申告していなかったと。50億円以上消えていることになるが、日産の帳簿上、どういう処理をしていたのか。

西川 そこも、実はお話ちょっとできないかなあと思っております。内容的にはもちろん確認をしている部分がありますし、かつ検察当局の皆さんとシェアをしておりますけれども、そこはちょっと当面、今の段階ではお答えを控えさせていただきたいなと思います。申し訳ないです。

――長期政権の弊害という言葉が出てきているが、どういう形でゴーン氏に権力が集中していて、クーデターのような形に至ったのか。ケリー氏の役割についても、どのようなポジションだったのか。

西川 今おっしゃられた点ですね、権力の集中とそれから、結果的にこれがクーデターのような形で崩壊するというふうに言われましたけれども、今回の件はやはり事実として見た場合には、事案として不正が調査の結果、見つけられたと。内部通報の結果ですね。で、そこを除去するということがポイントでありまして、いわゆる権力が1人に集中したと、それに対してそうではない勢力からクーデターがあったと、いうような、そういう理解はしていませんし、そのような説明をしたつもりはありませんし、そうは受け止めていただかない方がいいんじゃないかなと思います。そういう中で、先ほど申し上げた通り、1人に権力が集中してもこういうことは起きるとは限りません。権力を持って公正にやっておられる方はたくさんおられるんで、それが原因だということは言えないと思います。

 ただ、ガバナンス面から見ると、やはりそれが一つの誘因だったことは間違いないというふうに思います。したがって、ここの部分はどういう形で、より公正なガバナンスというのに持って行くのかというは大きな課題であるというふうに思っております。なぜ、どういう形で権力が集中してきたのかと。私も同じようなことを考えてみましたけれども、やはりこの長い間で、徐々に徐々に、何て言うんでしょうか、形成をされてきたということ以上、言いようがないんですが、一つはやはりルノーと日産両方のCEOを兼務していたという時代も長かったので、このあり方は少し無理があったのかなというふうには思います。ただ、そこはまだ私自身、十分に総括はできていないので、あまり軽々なことは言えないというふうに思っております。

 それから、このケリーという人間ですけれども、今おっしゃられた長い間の中で、ゴーン側近としてさまざまな仕事をしてきたということで、CEOオフィスということになりますから、そういう意味ではゴーンCEOそのものの権力を背景に相当な影響力を持って社内をコントロールしてきたということは言えると思います。ちょっと言葉が適切かどうか分かりませんけれども、これが実感であり、実態ですね。以上です。

――取締役会の招集は木曜日、22日という理解でいいか。

西川 すみません、えーっと、これはですね、木曜日です。

――22日ということでいいか。

西川 えーっとですね、はい、そうなります。招集をしてから2日を空けなくちゃいけないんで、木曜日だな、木曜日です。

――今回の調査は秘匿性が高かったというが、どれぐらいの人が今回の件を把握していたのか。

西川 あの、これも多くを申し上げることはできませんけれども、数名の単位と思っていただいていいと思います。数名の単位と思っていただいていいと思います。

――ゴーン氏はカリスマだったと思う。取引先を切り、リストラをし、豪腕を振るってきた。改めて、ゴーン氏はカリスマ経営者だったのか、それとも暴君だったのか。また、有価証券報告書の虚偽記載は粉飾決算に当たらないのか。

西川 まず2点目のところから先にお答えしますと、これは粉飾と言うよりは、記載が、何ていうんでしょうか、本来記載すべきことが記載されていなかったということで、この部分に関しては、当然これは有価証券報告書ですから会社の発行物になります。その部分については、適正ではなかったということで、その部分についての是正、あるいは当然のことながら、どういう形になるか分かりませんけれども、瑕疵を認めなければいけないというふうに思っております。そこは間違いないです。

 で、もう一つの点、カリスマだったのか、それとも暴君だったのかというご質問ありましたけれども、正直言って、正直言って私も今に至るまで当面の対応に追われておりますので、じっくり考えることをもう少ししたいと思っておりますけれども、事実として見ると、やはりなかなか他の人間できなかったことを、特に初期ですね、については非常に大きな改革を実施をしたという実績はまぎれもない事実だと思います。その後については、やはり功罪両方あるかな、ということを私としては本当の実感でございます。

 したがって、先ほど申し上げましたけれども、いろいろ積み上げてきたことが全部を否定することはできません。で、やはり将来に向けた財産は非常に大きいですし、ゴーンCEOとしてトリガーを引いたことであっても、その後、実際にそこをチャレンジをして仕事を進めてきたのは多くの従業員であり、あるいはパートナーの皆さん、取引先の皆さんとの協業であり、仕事であるわけですね。したがって、その部分の価値というのは毀損するものではないと思っておりますけれども、やはり、私も正確に振り返ることはできないんですが、最近の状況を見ますと、やや、その、権力の座に長く座っていたことに対する、何て言うんでしょうか、これはあのガバナンス面だけではなくて、実際の業務の面でも少し弊害も見えたなということは実感をしておりまして、その部分についてもちろん私の意見を申し上げることもありましたけれども、こういう事態に至った以降は問題点と思われる部分については、先ほど申し上げた通り、従業員から見ても目に見える形で手を打っていきたいというふうに思っております。

――具体的にどういう弊害が見えたのか。また、どのように進言したのか。

西川 あの、やはりですね、一つは実務から、現場からだんだん離れていくということなんで、彼に対して日ごろからリポートする人間というのは限られてくる。そういう中で多少間違ったというかですね、実務的にはもう少し確認をしなければいけないような判断を限られたインプットでしてしまうということ。その部分がですね。もちろんこれはですね、誰にでもあることです。私でもそういうことに気をつけなくちゃいけないんですけれども、その部分のどちらかというと問題点のほうが、昨今は多く見られたなというのが実感であります。

――ケリー氏について、代表取締役の肩書きのみで、執行役の肩書きないが、具体的にどういった業務だったのか。また、どのような影響力だったのか。また、ゴーン氏は日産ブランドの顔だが、日産ブランド、販売へのダメージは。ゴーン氏のリーダーシップでまとめてきた3社のアライアンスへの影響は。

西川 まず、グレッグ・ケリーについてですけれども、えーっとですね、彼の役割とか経歴については後できちんとお話しできると思うんですけれども、彼はもともと日産出身で日産で執行役員で、その後でアライアンスの仕事を兼ねて専務執行役員という立場で仕事をしていました。私が影響力があると申し上げたのは、CEOオフィスの時代からアライアンスの時代に至るまで、非常に幅広い仕事をして、かつアライアンスの面でも日産のCEOあるいは会長という面でも、絶えずゴーン側近として動いていましたので、そういう意味では影響力が大きいという、そういう役割を果たしていたと。ただ、近年は会長に対するサポートあるいはアドバイス機能以上のものは実際には持っておりませんでしたので、影響力という面では徐々に落ちてきたかなというように見ております。それから、二つ目の質問が、日産ブランドが実はゴーンブランドであるというところだと思います、ん……。

――(質問し直し)販売への影響と3社アライアンスへの影響は。

西川 販売への影響、あるいはお客さまから見た場合の日産に対する見方でありますけれども、これはお客さまが決めることだと思います。私としては、日産は日産であるということで、もちろんイメージとして、ゴーン・日産ということをを重ねて見られる方も多いと思いますけれども、私たちができることというのは、やはり日産ブランドをそのものとして皆さんにご愛顧いただくということで、今進めている「日産インテリジェントモビリティ」という、実はこの取り組みというのは今の経営陣、私をはじめとする今の経営陣のイニシアチブで進めていることでございますので、ここをぜひお客さまにも理解をしていただきながら、引き続きご愛顧いただきたいというふうに思っております。もちろん、今回の事案で皆さんに大きなショックを与えてしまったわけでありますから、その影響がないとは言いません。ただし、そこは我々とにかくできる限りの努力をしていきたいというふうに思っております。

 それから、3社のアライアンスについてでありますけれども、当面は先ほど申し上げた対応を取ろうと思っております。そして、繰り返しになりますけれども、このパートナーシップそのものに影響するという事案ではありませんので、むしろこの状態で取締役会どうしがより緊密に話し合いをして、取締役会として決めていくべき方向については十分議論して決めていくと。それから日常の運営面に関してはですね、これは内々の話になりますけれども、アライアンスとして責任を持っている人間はそれぞれCOOだったりCCOだったり、それぞれの会社にリポートする仕組みになっております。そして、その3社の責任者が集まってオペレーションの相談をして、方向を決めていくという会議体を日々やっておりますので、その部分に関する運営は従前通り、議長がいて3社があるんではなくて、3社でやるということになると思いますけれども、やっていけるというふうに思っております。で、もう少しストラテジックな部分について、どういう議論をするかということ、ここは当社は私がリードしてまいりますけれども、ルノーにつきましてはこれからルノーの取締役会のほうで体制を組まれると思いますので、その中でいろんなご相談ができる体制を組んでいきたいというふうには思っております。

――不正行為はこの2人だけだと自信を持っているのか。他の人の関与に関して、まだ調査は行っているのか。これ以上広がらないと確信しているのか。

西川 今の部分については私の方からコメントできる内容ではないと思っておりますが、先ほど申し上げた通り社内調査はほとんど終わっておりますので、実際に状況把握は十分しております。ここだけにとどめさせていただいたて、後は捜査の進展というところもありますので、そこを見ていただいて、いずれ皆さんにお話をできるかなあと思っています。

――ゴーン氏の高額な報酬は正当だったと思うか。権力の過度な集中を許してきたのは経営陣だったのでは。

西川 まず報酬について、これも私が今、具体的にコメントするのは適当でないと思いますけれども、日本全体、報酬についていろんな議論があると思いますけれども、総論として見るとやはり日本人だから低い、あるいは日本の企業だから低い、欧米の企業だから高いというのは、やはりあの徐々に是正されていくべきだろうということは私は思っています。私の個人の意見としてですね。ただ、絶対額として何が正しいのかというのは、これはやはりむしろ当事者、第三者の機関を含めて評価をして決めていくべきことだろうと思いますので、ここは額についてコメントは差し控えますけれども、総論として今申し上げた部分というのは伝統的な日本企業だからどうだと、あるいは欧米企業だから高い、あるいは同じ企業の中でも欧米から来た人は高くて日本人は低いとか、いろんな問題点があると思いますけれども、そこは本来の価値をパフォーマンスに応じて徐々に是正されていくべきだろうと私は思っています。

 で、もう一つ、権力の集中というところ。これはですね、振り返ってみると、後付けでは何でも言えるんですけれども、やはり今おっしゃったようなところですね、先ほど「猛省」すべきだと申し上げましたけれども、やはり反省をすべきところはある、というふうにみております。もちろん、それだけが原因ではないんですけれども、やはりそういうことが起きないように、おきないように絶えずすべきであろうということ。そこがやはり、このじゃあ19年間で十分できていたんだろうかということになると、そこはやはり反省をしなければいけない点は多いというふうに思っております。

――一つ目は特捜部との間で、司法取引はなされているのか。今回の件で社長としての責任は。

西川 あの、まず最初のご質問ですね、これは今ちょっと私はまったくコメントできない立場に、状況にありますので、ここは控えさせていただきたいと思います。

 それから、先ほど申し上げた通り、今日ですね、ここでまずお話したかった点というのは、もちろん皆さんの背後には、背景には、メディアの皆さんということではなくてですね、日産のファンもおられれば、いろんな方、これまでサポートいただいた皆さんおられるわけです。そういう方には本当に申し訳ないと思っておりますし、おわびをしたいと思っております。それに加えて、やはりこのタイミングで私が自らお話しをする、できるだけ今、私がこれをどんなふうに感じているかということをストレートに申し上げたかったということが大きなポイントであります。

 で、私の責任ということですけれども、今はやはり先ほど申し上げた通り、猛省すべきところもありますし、事態を鎮静化させて安定化させるということもございます。一日も早く会社を正常な状態にして先に進ませるということのために、実はやることが山積をしております。まずはそこを進めるということがとにかく私の仕事だと思っておりますので、その中で先ほどちょっと申し上げましたけれども、ガバナンスの体制それから執行体制についても変えるべきところは変えていくということ、そして次世代につないでいくという意味では、非常にさまざまなことをスピードを上げてやっていかなければいけないと思っております。まずそこをやった上で、その先をどうするかということを改めて考える時が来ると思いますけれども、今の段階ではまずそこを足早に集中をしてやっていくということに集中したいと思っております。

――アライアンスメンバーの反応は。それから、仮にルノーと三菱自動車でゴーン氏の職を解かない場合はどうするか。

西川 最初のリアクションということですけれども、これは情報を私のほうからご報告をして、コミュニケーションしたのはまだまだそこから時間が経ってないので、具体的にじゃあどうするとかどう受け止めるとかいうような反応をいただける段階ではないと思っております。ただし、私の方からとにかく許される限り早めにお伝えするということが私の責任であり誠意だと思っていまして、そういうつもりで両社の方へお伝えをしたというところでございます。その一報については「よく分かりました」という反応をいただいていますけれども、そこから先、それぞれどうされるかはそれぞれの会社でこれから取締役会の中でご判断をされていくということだと思いますので、今現在、私は承知をしておりませんし、仮定の話でお話を申し上げるべきではないと思います。

――内部調査について。ほぼ終了したということだが、ゴーン氏から話は聞いているのか。今回はゴーン氏からケリー氏に指示していたということか。

西川 二つ目のところから申し上げますと、ここも実は私から今なかなか申し上げにくいところであります。そこはやはり、我々つかんでいる事実はございますけれども、そこの部分に関する最終的なご判断というのは捜査当局でされるというふうに思っております。ただし、先ほど申し上げた通り、その2人が首謀であるということは間違いないというふうに見ております。それから、すみません、何でしたっけ?

――(不明)

西川 そこもお答えをしないほうがいいんじゃないかと。申し訳ない。全部答えられなくて申し訳ないんだけれども。

――何も質疑ができなくなってしまう。

西川 おっしゃる通りですね。私もその部分に関してプロではないので、私もどこを話せばいいのか、なかなかちょっとお伝えしにくいんですけれども、内部調査の詳細に関わる部分に関しては、その部分も情報をシェアして今、捜査をされているということですので、ちょっとそこは控えさせていただきたいと思います。

――話を聞いたかどうかもダメか。

西川 本人のですか? それは私は聞いておりません。

――臨時取締役会で後任の人事はどのように検討されているのか。どうしてこれだけの不正を見抜けなかったのか。

西川 どうして見抜けなかったのかと。ま、ある部分ですね、会社のなかの仕組みが、その部分、非常にこう形骸化をしていたというかですね、透明性が低い。要するにガバナンスの問題が大きいと思います。ここは、もちろんそういう状態だから不正があるとか、仮にガバナンスの仕組みに問題があっても、そこで先ほど申し上げた通り、必ず不正が起きるということではないと思うんですが、その部分に関して日産のガバナンスという部分で言うと、やはりこの集中という部分でいろんなことが起きてもなかなかそれを検知できないというような弱点はあったんではないかなというふうに思います。

 その背景としては、先ほど私の冒頭の話で申し上げましたけれども、ここも決めつけてはいけないんですが、やはり43%の株主であってですね、その株主であり、執行権もあり、株主の代表者でもあり、執行権もあり、また、日産としての取締役会の議長でもあるということで、非常にある意味、本来のオープンなガバナンスから見ると、非常に注意をしなければいけない権力構造だったと思うんですね。

 その部分に関してやはり、その部分の歯止めというか、何か起きたときに必ず分かるように、というところが弱かったんではないかなというふうに私は見ていますし、今の責任者としてそこは反省すべきところだと思いますし、直していかなければいけないというふうに思っております。すみません、それからもう1点聞かれましたよね?

――今の点で社内でゴーン会長が力を持っているから、誰も何も言えなかったという状況ではなかったのか。

西川 私が認識している限り、それが原因ではなくて、やはりなかなか本件が。本件というのは我々の社内調査からすると三つあるんですけれど、三つというか3種類の点があるわけですけれど、なかなか表面化をしなかった、ということだというふうに思っております。これは、それぞれが仕事をするときに、ぶつ切りで指示をすれば全体が見えませんから、そういう部分があると思いますね。

――「負の遺産」という表現をしたが、日本のユーザーの立場からするとゴーン体制以降、ホームマーケットが軽視されていると言われて久しい。これは国内シェアにも表れているかと思うが、これも負の遺産の一部として捉えられるのか。

西川 まず、今現在、今現在で見ると、日本市場を軽視しているということはまったくありません。できる限りのことをやろうと思っていますし、できる限りのことをやっているつもりです。

 で、その結果ですね、お客さまからも先ほど申し上げた日産のインテリジェントモビリティというところですね、評価をいただいているということだと思います。ここは我々の財産として育てていきたいと思っておりますし、また日本発のこのブランドの価値というのは、十分海外マーケットへのいい波及効果も起こしてますので、そういう意味ではより日本のマーケットが重要であるということは、今の経営陣は十分認識しております。

 これが、私が申し上げた負の遺産に当たるかどうかということ。なかなかまだ、私も総括をしていない段階で言えないんですが、事実として言いますと、やはり今現在、経営会議メンバーとしてやっている人間は、その部分に関して言えば、非常に日本のマーケットそのものの価値というか重要性を見て、お客さまも十分に見ているし、そういう仕事をしてくれていると思いますけれども、過去ですね、過去にやはりその部分が十分に会社の中で事実として認識をされて、それが十分に重要視されて意思決定をしてきたかというと、そうではない時期があります。

 したがって、そうではない時期があったがために、商品投入というのは非常に時間がかかりますから、なかなか挽回がしにくいということを実はこの数年間、経験してきたわけですね。そこが少しずつ解消されつつある、というのが今の状態なんで、これを称して、負の遺産の一つであるかどうかという、ここは断言は避けたいと思いますけれども、過去にそういうような、ある意味偏った意見で商品投入の議論をされた時期がありますから、その部分は影響があったと。結果として、お客さまに十分な我々からの訴求ができなかった時期があるという、大変残念なことはございます。これはまったくの事実と思っていただければ、私の実感であると思っていただければいいと思います。

――ガバナンスの観点で、ルノーとの間には「ルノー日産BV」という統括会社がある。ルノー個社の判断と同時に、ルノー日産BVのCEOとしてのゴーン氏という立場について、どう考えているか。

西川 申し訳ない。ご質問もう一度言っていただけますか? すみません。ちょっと趣旨が分からなかったので。

――ルノーとの間には、アライアンスを組んでいるだけじゃなくて、統括会社というものを持っていて、そのCEOもゴーン氏は兼ねている。今後ガバナンスを改革していくにあたって、日産側からどういったアプローチが考えられるか。

西川 分かりました。もちろん今現在も、「ルノー日産BV」というアライアンスの会社のCEOですかね、その仕事はカルロス・ゴーンが兼務をしているという状態に変わりはありません。この部分について、どういう形でその改善を図っていくのかということ。これは日産だけでは決められないことでありますし、ルノーの取締役の皆さんといろいろと協議をして決めていくべきテーマの一つであろうというふうに思っております。

 今のところ、まだそれ以上の議論をしていませんので、逆に私がここでああだこうだと言うと、まだまだルノーの取締役の皆さんへはご一報をしただけですから、これからそこも含めてご相談をしていくということになるのではないかと思っております。

――当面のガバナンス体制について、ゴーン氏とケリー氏、取締役のメンバーが2人欠員するわけだが、この後任は次回の総会まで人選を固めることはないのか。当面、取締役会の議長は西川氏が兼任する形か。また、内部調査はどのようなスケジュール対外的に公表するのか。

西川 分かりました。実は今ご質問の点、すべて実は取締役会の皆さんに諮って進めたいと思っております。今現在、私が結論を申し上げるのは時期尚早であろうと思っております。

 ただし、当面のガバナンスという点につきまして、先ほど申し上げた…。すみません、まず2名欠員というか、取締役としては人数、まだ取締役そのものは解任できませんので、実際にはどの段階で総会を招集してその部分を是正をしていくかというのは、これからここも諮っていきたいと思っておりますけれども、まず何より先ほど言われた、調査だけではなくて、その結果の中身、今ご質問がいろいろとありましたけれども、この「ガバナンスをどうしていけばいいんだ」という点について、ここは早急に仕事をしなければいけないということになっておりますので、そこは先ほど申し上げた通り、独立取締役の方に中心になっていただいて、もちろん私も入りますけれども、第三者の方も入れて、日程感としてはあまり時間を取らずに、できる限り早めにまず「まずどうするんだ」という提言をいただいて、その後にもう少し手間のかかる取締役の構成であるとか、総会の決議が必要なことも含めて対策をしていくと。そういうような提言をしていただきたいなというふうに思っております。

 したがって、「ガバナンス当面どうするんですか」ということに関しては、まず当面、木曜日に相談をさせていただいて、そこで当面の運用を決めます。そこで、その委員会の時間軸と構成を何とか決めて、そしてその中から短期の対応、それから取締役会の構成も含めたもう少し時間、手間のかかる対応、両方提言をいただければいいなと思っております。

――社内調査でゴーン氏からの弁明を西川社長は聞いていないと。

西川 私はですね、私は直接は聞いておりません。

――動機はまったく分かっていないという状況か。

西川 ちょっとここも分かっている部分について申し上げると、だんだん中身を言っちゃうことになるので、ちょっとここは控えさせてください。調査は十分にできていると思っております。

――ゴーン氏への権限の集中による弊害という話が出た。猛省という言葉がありましたが、なぜ権限が集中するような事態になったのか、それを食い止める時期はなかったのか。もしくは、そういう提案があったけども通らなかったのか。行き過ぎた権限の集中を許してしまった原因は。

西川 私ももう少し考えてみたいなと思います。結果としてですね、結果として今、振り返ってみると、今の状態とそして振り返って見るとやはり、仮に第三者の方から「やはり権限が集中し過ぎていませんか」と言われれば、「その通りですね」と言わざるをえないと思うんですね。

 何でそうなったかというところ、うーん、これは非常に難しいんですけれども、やはり人も入れ替わりながら徐々に徐々にそういう形ができていったというふうに見えますし、私自身その中で私がどういう立ち位置で何ができたんだろうかということも、もう一度反省してみなければいけないと思っておりますけれども、振り返ってみるとやはり2005年ですかね。ルノーと日産のCEOを両方兼務するということになりました。その時、我々はごく当たり前に、それは今まで日産を率いてくれたゴーンCEOがルノーの責任者になるんだから、日産にとっていいことではないかということで、それ以上、その結果どういうことが将来的に起きてくるのかということをあまり議論をしませんでした。

 今、アライアンスの将来をどうするんですかということで、「1人個人に依存しすぎている形というのはなかなか将来は見通せませんよ」という質問もいただいています。やはりその段階が、一つの今に至っている契機というか、転機だったんではないかなと思います。残念ながら、その段階で、その先そういうことをしたらどういうことが起きるかということは、我々も十分分かっていなかったという中で、徐々に徐々に実際面で権力が集中していったということが言えるんではないかなと。それがすべてとは言いません。ただ、今振り返ってみるとそういうことが言えるなというふうに今は思っております。

――そもそも内部告発から始まったということだが、日産社内から外部に告発があったのか。それとも日産社内で、社内の経営陣に対する内部告発があり、社内での調査が始まって、それから検察へという流れになったのか。

西川 すみません、失礼しました。言葉足らずでしたけれども、これは内部の仕組みでございます。そこから、その後で発展したということです。

 夜遅い時間に、かつ、ご質問いただいてもなかなかお答えできずに、大変申し訳ありませんでした。事案の性格上、こういう形での会見になったことを、ぜひお許しいただきたいと思います。ありがとうございました。

西川社長の冒頭発言はこちら

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事