『情報と戦争』 評者・池内了
著者 ジョン・キーガン(軍事史家) 訳者 並木均 中央公論新社 3800円
有効活用は司令官次第? 戦時の情報戦を徹底分析
昔から、戦争という緊急事態となれば、敵国の戦略・戦術を探り出す「情報(インテリジェンス)」をいかに正確に把握するかが戦争の行方を決める上で決定的であった。
そのためにスパイを放ち、通信を傍受し、暗号を解読し、敵軍の動きを監視し、と情報戦が激しく繰り広げられてきた。本書では、イギリス海軍が、エジプト遠征中のナポレオン海軍を奇襲で破った1798年の戦い以来の戦略情報と戦争の様相を具体的な戦史に沿って整理している。
私にとって特に興味が深かったのは、米国による日本の通信の傍受・暗号解読の下で戦われたミッドウェー海戦、Uボートを巡る大西洋の制海権を争ってのイギリスとドイツの情報戦、ナチスが開発した無人飛行兵器、V2ロケットに対するイギリスのヒューマン・インテリジェンス(人間を媒介とした諜報活動)の三つの話題であった。
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週刊エコノミスト
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