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ジーンズ製造は環境対策の先駆 レーザー、オゾン駆使して排水減=南充浩

レーザー光線で加工中のデニム生地(筆者撮影)
レーザー光線で加工中のデニム生地(筆者撮影)

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは2018年秋、米ロサンゼルスの研究施設でジーンズ加工における水使用量を最大99%削減する技術を開発したと発表した。ナノバブルやオゾンでジーンズを洗う機械と職人の熟練技術をかけ合わせて水使用量を大幅に削減するという。同社は今後、グループ全ブランドにこの技術を導入する。20年には約4000万本のジーンズ生産で約37億リットルの水を削減できる見込みという。

 環境負荷低減の取り組みとしてこの発表は注目を集めたが、実はジーンズメーカーの取り組みとしても、また技術的にも目新しいものではない。大量の水を使用するジーンズの製造工場は、青色の排水を大量に排出することがかねてから問題になってきた。このため国内のジーンズ加工業・デニム生地製造業は、以前から環境配慮のための水使用量削減の取り組みを進めてきたのだ。

 ジーンズの製造は、デニム生地を作る紡績→染色→織布→整理加工の工程と、生地をジーンズに仕立てる裁断→縫製→洗い加工の工程がある。水洗いを繰り返すのが特徴だが、最も水を必要とするのは染色と洗い加工だ。それらの工程でデニム生地をブルーに染めるインディゴ染料が水に溶け出し、真っ青な水が大量に排出される。

 この課題に対して、さまざまな取り組みが行われてきた。

 染色工程での廃液対策では、国内デニム生地生産最大手のカイハラ(広島県福山市)が05年開設の工場に青色の廃液を無色透明化する装置を取り付けている。

 洗い加工は縫い上がったジーンズの糊(のり)を落としたり、色を薄くしたりする工程で、ジーンズに色落ち加工を施すために何度も水洗いしたり、塩素系薬品で漂白(ブリーチ加工)したりといったことが行われてきた。

 この工程で一気に排水を減らすきっかけになったのが、オゾン加工やレーザー光線加工の登場だった。オゾン加工は、オゾン分子が酸素分子と酸素原子に分離する際に色を剥離させる加工法。レーザー光線加工は無色・高温のレーザー光線を生地に照射して色を落とす技術だ。いずれもほとんど水を使わない。

豊和の洗い加工場。レーザー光線加工機にデニム生地を並べる(筆者撮影)
豊和の洗い加工場。レーザー光線加工機にデニム生地を並べる(筆者撮影)

 国内最大手の洗い加工場の豊和(岡山県倉敷市)は11年までにレーザー光線加工機とオゾン加工機を導入した。他の洗い加工場でもレーザー光線加工やオゾン加工を始めている。従来の水洗いのジーンズとレーザーやオゾンによる加工品の2種類が市場に出回っていることになるが、一般消費者が両者を見分けるのは難しいだろう。

コスト抑制効果も

 国内最大手のジーンズ専業メーカー、エドウイン(東京都品川区)はレーザー光線加工のジーンズを現在、月産2万本ペースで生産しており、将来的にはこれを同4万本まで引き上げたいという。またオゾン加工も現在は月産5万本ペースだが、将来的にはこれを年産120万本まで拡大する考えを明らかにしている。

 大手だけではない。創業3年で卸売り店舗数が200店を突破したジーンズブランド「ブルーモンスタークロージング」を展開するブリッツワークス(東京都千代田区)もレーザー光線加工を採用している。同社の青野睦社長はその理由を「エコの観点もさることながら、工程数の削減、洗い工程数の削減に加えて納期も短縮できるため」と話す。製造コストを抑えることで、同社は3000~6000円台の製品展開が可能になっている。

(南充浩・ファッションジャーナリスト)

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