景気後退の回避策がバブルの芽に=渡辺浩志
昨年末以降、米国の株価が軟調だ。急落の局面では、市場参加者から「バブル崩壊の始まり」あるいは「景気後退の予兆」との声も上がり、市場は悲観一色となった。
昨年、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は講演で、過去2回の景気後退はバブル崩壊によって深刻化したと述べた。過去2回のバブルとは2000年ごろの株式バブルと06年ごろの住宅バブルを指す。当時は低金利を背景に、家計・企業が過剰債務を膨張させ、株式・住宅市場では資産価値の過大評価がみられた。
しかし、現在の米国では、家計・企業の債務返済負担を表すデット・サービス・レシオは極めて低く、過剰債務はみられない(図1)。また、株価の過熱感を測るPER(株価収益率)は景況感と比べて下振れしているほか、住宅価格の上昇率は需給を表す在庫率と連動しているなど、資産価値の過大評価もみられない。現在の米国にはバブルの要素はなく、それゆえバブル崩壊による深刻な景気後退を心配する必要もない。昨今の株安は、景…
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週刊エコノミスト
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