小説 高橋是清 第30話=板谷敏彦
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(前号まで)
これまでの放蕩・非行の生活を脱し官途の道を選んだ是清。文部省の判任御用掛に採用された後、元福井藩士の友人山岡次郎に誘われて、特許関係の仕事ができる農商務省に転職する。
第30話 松方正義
話は西南の役の翌年、明治11(1878)年2月までさかのぼる。当時大隈重信大蔵卿(きょう)(大臣)の下でナンバー2の地位にいた薩摩出身の松方正義は、パリ万国博覧会事務局副総裁として欧州出張に出かけた。
当時の日本にまだ中央銀行はなく、政府が自ら紙幣を発行し、それに加えて米国の銀行制度をまねた国法の民間銀行である百数十行の国立銀行もまた紙幣を発行していた。
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週刊エコノミスト
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