教養・歴史コレキヨ

小説 高橋是清 第31話=板谷敏彦

挿絵・菊池倫之
挿絵・菊池倫之

(前号まで)

 非行・放蕩生活を脱し、是清が農商務省で官途の道を歩み始めた頃、大蔵省の権力を掌握した松方正義は膨れあがる不換紙幣を整理するため、日本初の中央銀行設立の準備を進めていた。

第31話 日銀誕生

中央銀行設立会議のメンバーの一人、富田鉄之助は仙台藩出身。幕末に是清を従えてコロラド号で渡米した。その時の是清の立場は富田のお伴の足軽という名目だった。

 富田は戊辰戦争の時に故郷を思い一時は日本へと帰国したものの、師匠である勝海舟に諭されてすぐに米国に戻り勉学を続けた。明治5(1872)年、公使として米国に赴任していた森有礼(ありのり)の目に留まり、ニューヨーク在留領事心得として外務省へ入省。その後帰朝して明治10年に外務省少書記官に任官、軍隊で言えば佐官級の高級官僚である。

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