教養・歴史書評

『幸福の増税論 財政はだれのために』 評者・白井さゆり

    著者 井手英策(慶応義塾大学教授) 岩波新書 840円

    分断社会克服に向けベーシックサービス提唱

     日本社会は「働かざる者食うべからず」という言葉に代表されるように、国民は勤労・倹約・貯蓄を尊び、できるだけお上(政府)の世話にならず自己責任で生活上の問題を解決すべきとの道徳観が根付いている、と本書は主張する。このため、収入が長く低迷して生活不安を抱える多くの「庶民」は、生活保護受給者(低所得・障害者)をその道徳観から逸脱する「既得権益者」だとみなし、静かな怒りに満ちた感情で社会的弱者=負け犬と位置づけて自分たち(庶民)と区別する。ここには、共生する共同体の構成員同士で痛みを分かち合う発想はなく、モラルハザードを減らすべく生活保護水準をもっと下げるべきとの見方につながる。

     この分断社会で皆が幸福に生活できる方法はあるのか。従来二つの対立する改善法が模索されたが、本書はい…

    残り798文字(全文1185文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,000円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    9月3日号

    絶望の日韓16 「次は自動車」焦る韓国 戦後最悪いつまで ■浜田 健太郎19 インタビュー 申ガク秀 元駐日韓国大使 “法の日本”と“正義の韓国”の妥協点 「韓国政府と日韓企業で徴用工補償を」20 徴用工問題の本質 植民地支配の “清算”に変化 ■浅羽 祐樹22 韓国社会の意識 摩擦招いた道徳的“正 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    最新の注目記事

    ザ・マーケット