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大規模LNGの豪イクシスが利益貢献 上田隆之=国際石油開発帝石社長 編集長インタビュー/946

    上田隆之 国際石油開発帝石社長 撮影=中村琢磨
    上田隆之 国際石油開発帝石社長 撮影=中村琢磨

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 豪州で手掛けている大規模LNG(液化天然ガス)開発・生産プロジェクト「イクシス」で、2018年10月に出荷が始まりました。

    上田 豪州の北西部の海底ガス田から天然ガスを生産し、長さ890キロに及ぶパイプラインで豪州北部ダーウィンの陸上施設へと運んで液化して出荷し、日本国内外の電力会社やガス事業者などに売ります。販売先とは長期契約を結び、安定かつ長期の収益が見込めます。イクシスでは、フル生産だと年間890万トンのLNGが生産可能です。これは日本の年間総輸入量8000万トンの1割を占めます。ガス田からはコンデンセート(超軽質の石油)も生産できます。

    ── 生産の状況は。

    上田 フル生産までは2~3年かかります。出荷開始1年に当たる今年10月までにフル生産の60~70%に達することを目標にしており、今のところ順調です。中期経営計画では22年度の会社の最終利益目標を1500億円としていて、その過半はイクシスからの利益と見込んでいます。ただ、正直に言って1000億円ぐらいにはなるのではと期待しています。

    ── 開発に20年かかりました。

    上田 1998年に探鉱の権益を取得して、仏石油大手トタルと共に開発してきました。総事業費は4兆円です。当社の権益比率は約62%で、初めて大規模天然ガス開発・生産案件にオペレーター(操業主体)としてかかわりました。

    ── オペレーターであることが重要ですか。

    上田 今回のような大規模開発で、設計から操業まで責任を持って運営に当たるオペレーターを務められるのは、世界では石油メジャーと呼ばれる10社程度しかありません。イクシスは、海底から採取した資源を気体と液体に分離する海上施設、分離された液体から水分を取り除きコンデンセートを生産するFPSO(浮体式海洋石油生産貯蔵積出設備)、ガス用パイプライン、陸上のガス液化施設などから構成されます。これらを建設するだけでも大変ですが、さらに全体を統合して運用する能力が必要とされます。

     今後、生産能力を上げる中で、あの配管から水が漏れたとか、あの機器に不審な振動があるとか、ソフトウエアのバグも出てきます。苦労は絶えませんが、当社がオペレーターを担えることを示せば、世界での存在感も増し、会社にとって大きな財産になります。

    ── イクシス以外のプロジェクトは。

    上田 当社は20カ国以上で70以上の資源案件を持っています。このうち、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビにある陸上・海上油田や、アゼルバイジャンの南カスピ海沖ACG油田といった大型案件では、各鉱区の権益をおおむね2050年前後まで延長しました。カザフスタンの北カスピ海沖のカシャガン油田も41年まで権益があります。このような大型で安定生産が見込める権益によって、基礎となる収益源は確保しています。さらに今後はイクシスの収益が上乗せされます。この安定収益を新たな開発に投じます。

    ── 新たな案件とは。

    上田 インドネシア・アラフラ海でアバディ・ガス田を発見しました。ガスの想定生産量は年間950万トンと、イクシスより大きいです。当初は液化施設を海上に設置する予定でしたが、インドネシア政府の要望もあり陸上設置に計画変更しました。20年代後半の生産開始を目指しています。

    ── ですが、アバディの権益は28年までです。

    上田 生産が始まってすぐに権益を失っては困るので、延長できるように交渉しています。陸上施設への計画変更はインドネシア側の要望なので、そうした点も考慮してもらえると思っています。

    ── 2040年までの長期目標として「国際大手石油会社トップ10へ」を掲げています。かなり野心的ですね。

    上田 石油開発企業の世界のスーパーメジャーとしては、米エクソンモービルや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどがあり、その次のグループに入るのが目標です。資源の安定供給の観点から、日本に一つぐらいスーパーメジャーに近い会社があってもいいのではないでしょうか。確かに野心的な目標ですが、当社の生産量は世界15位程度。今後、イクシス分などの上乗せもあるので、絶対に手が届かないという目標ではありません。ただし、量を追求するだけではだめで、技術力や市場での存在感もトップ10に見合うレベルに上げなければなりません。

    ── そのためには、M&A(企業の合併・買収)も一つの手段でしょうか。

    上田 優良なM&Aの話があれば検討はします。しかし、単なる規模拡大を目的とするのではなく、コストを落とし、競争力を持つことを問わなければなりません。

    ── 再生可能エネルギー事業にも取り組んでいます。

    上田 エネルギー会社として生き残るには再生可能エネルギーへの取り組みが必要です。例えば当社の探鉱・掘削技術は地熱発電にも活用できます。インドネシアでは、サルーラ地熱発電所の建設・発電事業に参画しています。洋上風力でも、海底油・ガス田で培った技術が活用可能なので、日本やアジア地区での展開を考えています。

    (構成=種市房子・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどのような仕事をしていましたか

    A 政府で通商やエネルギー政策を練っていました。情熱に燃えて、関係部局と議論や交渉をして楽しい毎日でした。

    Q 「私を変えた本」は

    A 『ヤバい経済学』(スティーヴン・D・レヴィット、スティーヴン・J・ダブナー)です。統計的手法で、世の中の裏を明かす名著だと思います。

    Q 休日の過ごし方

    A ゴルフやジムで体を動かすようにしています。


     ■人物略歴

    うえだ・たかゆき

     1956年生まれ。静岡県立静岡高校、東京大学法学部卒業、80年通商産業省(現・経済産業省)入省。ガス行政などを担当した後、資源エネルギー庁長官、経産審議官。2016年6月に退官後、17年、国際石油開発帝石特別参与。副社長を経て18年6月から現職。62歳。


    事業内容:石油、ガス、鉱物資源の探鉱、開発、生産、販売

    本社所在地:東京都港区

    設立:2006年4月

    資本金:2908億円

    従業員数:3189人(18年末、連結)

    業績(18年3月期、連結)

     売上高:9337億円

     営業利益:3573億円

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