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オフィスで堅実利益、ホテルを拡大へ 伊達美和子 森トラスト社長

    Interviewer 藤枝克治 Photo 中村琢磨:東京都品川区の東京マリオットホテルで
    Interviewer 藤枝克治 Photo 中村琢磨:東京都品川区の東京マリオットホテルで

    ── 現在進めている主要プロジェクトは?

    伊達 東京都港区虎ノ門の「東京ワールドゲート」プロジェクトです。東京メトロ・神谷町駅直結で、地上38階・地下3階の虎ノ門トラストタワーを中心に、1万6210平方メートルの敷地を開発しており、2020年3月に完成予定です。虎ノ門トラストタワーは低層階に商業施設や医療施設、3~30階の中層階がオフィス、高層階が住居やホテルになっています。

    ── アピール点は。

    伊達 高層階に「エディション」ブランドのホテルを開業します。エディションは世界でホテルを展開するマリオット・インターナショナル(米)の最高級ブランドで、日本初進出です。オフィスについては、約半分を「クリエイティブフロア」と称して、天井板や床材をはめずに引き渡すことにしています。

    ── なぜそのようなことを?

    伊達 今、移転を計画する企業が求めるのは「これまでと異なる環境にしたい」「社員がコミュニケーションを取りやすいオフィスを作りたい」ということです。こうした企業は、標準的なオフィス像にはとらわれていません。自由にデザインできる状態で引き渡すのがいい、という発想です。

    ── 森ビルとは、起源が同じです。

    伊達 祖父の森泰吉郎は都心に良質の近代的なオフィスビルを建設することが社会貢献だとして、森グループを創業しました。その後、泰吉郎の三男で、私の父・森章がグループ内の中短期不動産事業と、自ら創業したホテル事業を中心に承継して作り上げたのが森トラストグループです。(編集部注・森トラストの前身・森ビル開発は、元々は森ビルのグループ会社。泰吉郎氏の死去後、章氏の兄・稔氏が森ビル社長に就任し、章氏が承継した森ビル開発は分離独立。社名を森トラストに変更した)

    ── 参入当時のホテル事業はどのようなモデルでしたか。

    伊達 日本初の法人会員制リゾート事業です。「ラフォーレ」ブランドで当社が施設を建設し、会員企業の社員が安価で利用できます。

    ── ホテル事業は、当初のモデルと現在では異なるのでは。

    伊達 バブル崩壊後、企業の福利厚生が余暇に向けられなくなってきました。一方で1990年代~00年ごろには、都心で大型ビルの開発が加速し、オフィスだけではなく、店舗やホテルも入れて複合施設化する動きが出てきます。このような環境の中、当社としては、都心で世界的ブランドのホテルを展開するのが最適と判断しました。その結果、ウェスティンホテル、マリオットホテルやコンラッド、シャングリ・ラ ホテルなどを自社開発物件に誘致できました。このように、リゾート中心の自社ブランド展開から、都心での海外ブランドの誘致・運営にも事業を拡大してきました。

    ── 今後もホテル事業を拡大しますか。

    伊達 オフォスビルで確実な収益を上げながら、ホテル事業を同等の柱に育てたいです。ホテルは、世界的ブランドを都心で展開することが中心ですが、リゾート地での展開も加速します。

    ── オフィスビルの戦略は。

    伊達 駅に近く、企業が集積している立地に投資することです。1フロアの面積が大きい物件を建てることも重視しています。さらに、都市計画の制度をいかに活用して価値ある物件を作るのか、戦略を徹底的に練ります。

    ── 具体例は。

    伊達 08年完成の丸の内トラストシティです。高層階にはシャングリ・ラ ホテル東京があります。当時、都市計画関連法で優遇される典型的な手法は周辺・敷地内の緑地や道路の整備でした。このビルは東京駅に隣接しており、行政に「東京の玄関口に世界的ブランドの高級ホテルがあれば、国際都市東京の発展に資する」と都市計画法令上の優遇措置を申請し、容積率緩和などの措置を受けました。当社は当時としては先鋭的だった高級ホテル誘致という手段で、経済価値を生み出そうと試みたのです。

    ── 事業ポートフォリオは。

    伊達 営業収益で、オフィスビルの開発・運営などの賃貸関係事業が約4割、ホテル関係事業が約2割、不動産販売・その他事業が3割超です。中期経営計画では、この3本柱で27年度に営業利益550億円を目指しています。

    ── 進捗(しんちょく)状況は。

    伊達 19年度計画で27年度の目標値達成が見込まれます。賃貸も分譲も引き合いが強いためです。また、3月に米国カリフォルニア州サンノゼ市にオフォスビルを取得し、19年度から収益が入り始めます。ハイテク企業の集積地で、安定した賃料収入が見込まれます。

    (構成=種市房子・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどのようなビジネスパーソンでしたか

    A 理詰めで、周囲に嫌われていたかもしれません。30代半ばで、正しいことだけが答えではないと気付いて、モノの言い方を変えました。

    Q 「私を変えた本」は

    A 高校時代からマイケル・ポーターの本を読んでいました。マーケット戦略で学ぶべきものがありました。

    Q 休日の過ごし方

    A ジムで運動をしています。


     ■人物略歴

    だて・みわこ

     1971年生まれ。聖心女子学院高等科、聖心女子大学文学部卒、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。長銀総合研究所を経て、98年森トラスト入社、2000年取締役。常務取締役、専務取締役を経て16年6月から現職。東京都出身。47歳。


    事業内容:不動産開発、ホテル経営、投資事業

    本社所在地:東京都港区

    設立:1970年6月

    資本金:300億円

    従業員数:2539人(2018年4月1日現在、連結)

    業績(18年3月期)

     営業収益:1619億円

     営業利益:319億円

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